▼ 2008/09/15(月) 告白
コンセプトテーマ曲:「初恋」 作詞:村下考蔵 作曲:村下考蔵 歌:村下考蔵
前原圭一と園崎魅音の二人にあるかもしれない未来シリーズ第3弾。
舞台設定は、「勘違い」と同じく昭和59年の初冬。
受験勉強に必死に取り組む圭一だったが、ふとしたきっかけで集中力を失ってしまう。
その原因とは……
「ふー……一休みするかぁ……」
背伸びをして、コーヒーでも飲もうと階下の台所へ向かう。
まだ受験までは少しあるが、今俺は学校に居る時間以外のほとんどを受験勉強に費やしている。
こんなに勉強するのはこの雛見沢に引っ越してきて以来初めてだな……でも、あの頃とは違う……あの頃の俺は参考書を開き、問題を解く機械のようだったからな。
今は違うぜ!
だって目的をちゃんと持って、その為の1ステップとしての受験だってわかってるし、これが乗り越えるべき最初の壁だってことも意識してるからさ……
「よし! もう少し頑張るか!」
絶対に、100%なんてことはあり得ない。
受けようとしてる高校はまぁ特に難関って訳じゃあ無い。普通にやってりゃ受かるとは思うぜ?
でも、何があっても俺はあの高校に行かなくちゃならないんだから……他の選択肢なんて俺には考えられないんだから……
さらに参考書を片手に問題を解きながら、ふっと集中が途切れる。
「最近……顔見てねぇなぁ……遠慮してんだろうけど、電話もろくに掛かってこなくなっちまったし」
それが少し寂しかった。
そう……分校で部活やってる時だって……
「2代目にしてきっと歴代でも最弱の部長だよな、俺」と一人ぼやいてみる。
そう、平日はともかく土曜の部活なんざ、校庭や入り口が気になって集中力を欠いて、最下位に沈んで罰ゲームなんてのも珍しくなくなっちまったしな……
今日だって部活の最中に考えてたことは今、ここに居ない人間のこと。
初代部長 園崎魅音
一つ年上で、ちょっとガサツっぽくて、同性の友達みたいな感覚でつきあえるなんの気兼ねも無い最高の仲間だった奴。
過去形なのは別に仲違いしたとかじゃない。俺の中であいつの立ち位置が変わっちまったからさ……
ガサツっぽいけど、それはきっと弱々しい自分を隠す鎧。
何でも出来るスーパーキャラクターで天下御免な奴だけど、打たれ弱くてへこみやすくて、傷つきやすくて……きっと一番傷つけてきてたのは俺なんだろうけどさ、たははは。
最後に会ったのはいつだっけ?
先月かな?
もう何年も顔見てない気がするぜ……まぁ声だけは昨日のすっげぇ久しぶりの電話で聞かせて貰ったけど……
今日の部活もほんとさんざんだったな……梨花ちゃん中心にオリジナルのメンバー全員で俺を狙い撃ちにしてきやがって……参ったぜ!
そもそも昼休みから風向きがおかしかったんだよ……いきなり梨花ちゃんの一言から全てが始まったって感じさ。
「圭一、圭一は昨日、魅ぃとちゃんとお話しましたですか?」
「え? な、なんで梨花ちゃんがそんなこと知ってんの?」
やばっ……つい、うっかり……
「え、圭一くん、昨日魅ぃちゃんとお話したのかな、かな? いったいどんなお話したのかな、気になるよぉ~」
「いや、最近どうよとか勉強頑張ってんだってとか電話でそんな話をちょっとしただけだよ」
まぁ俺としちゃ……声が聞けただけで充分にうれしかったんだけどさ、へへ。
「あぁ、一昨日の買い物の件聞かれてちょっとビビったけど」
「え? なんでかな、なんでかな?」
しまった……また余計なこと言っちまったよ……
「魅ぃは土曜日の圭一とレナのお買い物デートのことを知っていたのですよ、にぱー★」
く、黒いぞ、梨花ちゃん……
「え、えー! デートじゃないよ、ないよぉ! はぅ~ 魅ぃちゃんが勘違いしたらどうしよう……」
「電話に出て開口一番『でさぁ、圭ちゃぁん、レナとの鹿骨でのデートはどうだったのよぉ? うっひゃひゃひゃひゃ』だぞ……参考書の買い物にレナと一緒に行っただけだって言ってんのにさぁ!」
そう、参考書を買いに二人で行っただけだ。それは事実だし何の後ろめたいことも無い出来事だ。
「え、え? そうなの? はぅ、どうしよぉ……魅ぃちゃんにちゃんと説明してくれたの圭一くん!」
「わかんねぇ……最後には『んじゃ圭ちゃん、レナとよろしくやっててねぇ! あ、まだ中学生なんだから節度あるつき合いしなきゃダメだよぉ、ぎゃっはっはっはっは』とか言ってやがったぞ……」
「圭一くん、ちゃんと説明しなきゃダメなんだよ、だよ!」
レナぁ! な、なんでそんなに殺気だってんだよ……
「ほんとうにダメな殿方ですこと! お買い物とデートの違いの説明も満足にお出来にならないなんて!」
「いや、だからちゃんと説明したってばさ!」
なんで沙都子までこんなに噛みついてくんだよ……
で、放課後の部活では俺一人が集中砲火を受けたって訳だよ……
しかもよくわかんねぇけど罰ゲームは今度、まとめてとか言われたんだよな……
しかも、いつもは帰りが一緒のレナは
「これも罰ゲームだから圭一くんは一人で帰ってね! なんでみんなが怒ってるかちゃんと考えなきゃダメだよ!」
とか言って殺気漂わせてるしさ……
夕焼けの中、へたくそな口笛拭きながら一人での帰り道であれこれ考えちまったぜ……
今日を振り返っていて、昼休みの羽入の言葉が思い出される。
「圭一はみんなの気持ちを汲んで、魅音とのことをきちんとしなくてはいけないのですよ」
みんなの気持ちを汲んで? なんで?
魅音とのことをきちんとする? 何を?
そりゃ、魅音はさ……か、可愛いよ、うん……
それに、その……なんだ……お、俺が付いててやんないと脆いって言うか、すぐへこむしさ……
俺自身は魅音のことどう思ってるのかって言われりゃ、その……なんだ……す、好きなんだとは思うけど……
受験勉強だって万全を期そうとしてんのは一緒の高校行きたいからだしな。
その……できれば魅音のクラスメートとかそういう人たちに俺が会ったりした後で魅音が恥かかないようにとかさ……
いろいろ考えちまうんだよっ!……何一人で熱くなってんだよ、俺……
俺は……バカなことやらかして、それで雛見沢に逃げるようにして引っ越してきた身だしさ……
あいつは将来は雛見沢を背負って行かなきゃならねぇ園崎本家の次期頭首だしよ……
その……世間的に言う「釣り合い」ってやつが取れないんじゃって不安がずっとずっとあんだよ。
不安を埋めるのは……俺が自分に自信を持つしか無いんだよな……だから俺がいったいどう自信が持てるかが重要なんだよ。
すまん……俺はやっぱしというか、結構ヘタレだわ。
自信も無いし……こう……誰かの為だってんならがむしゃらになれる気はするけど、自分自身の為にどうこうってのがな……うまく出来ない。
「まずはあいつと同じ高校に行く。それからちゃんと大学行って、あいつの力になれるような男にならなきゃ……そうでなきゃ俺は……あいつの側に最後まで居られない気がするんだよなぁ……」
いや……まずは認めなきゃいけないな……俺は魅音が好きだ。だから側に居たい。
側に居たいってのは……そういう意味だよな……
け、けど、その……あいつも今の学校で……その……誰かに告白とかされてたらって心配だし……
「あーもう……」
頭をガリガリとかきむしるように唸る、ヘタレな俺。
「だいたい、寝ても覚めても魅音のことが真っ先に浮かんでんじゃねぇかよ、俺……」
ずっと胸の中の一カ所に魅音が居て、魅音が笑ってて……笑わせてるのが俺で、魅音が泣いてて……泣かせてるのが俺で……
そもそも、こんな気持ちになったこと自体が生まれて初めてだからどうして良いかわかんねぇんだよ!
参考書とかには載ってる訳ねぇし……父さんや母さんに相談したらとんでもない事件になりそうだしよ!
「困った時は仲間に相談しろ」とか偉そうに誰かに向かって言った気もするけど……相談のしようがねぇよ……
くっ……前原圭一、最大のピンチじゃねぇか、これ?
山狗とかいう連中より手強いぜ、こいつは……
ちっくしょう、試験問題は解けてるけど頭にさっぱり入ってる気がしねぇ!
……もう、寝てんのかな、あいつ……声聞きたいな……
まだ10時にはなってないよな……まだ起きてるかな……でも、朝は弁当作って興宮までだからめっちゃくちゃに早起きしてんだよな、きっと……
邪魔しちゃまずいよなぁ……あー、なんかすっきりしねぇ!
けど、けどよ……これがすっきりしなきゃ、なんかまずい気がするんだよ。もやもやしたまま試験受けたら全力出せない気がするぜ……
決心しろ、前原圭一!
自分の気持ちは理解出来てんだろ? それに素直になりゃ済むんだ!
そうさ、俺は魅音が好きだよ! それを認めて素直になりゃ済む話だろ?
そもそもそれを伝えなきゃ何も始まらないんだぜ!
結果を気にして行動出来ないなんて、俺らしく無ぇだろ?
俺は決心して部屋を出る。
階段を降りて電話へ向かう。
受話器を手にとってダイヤルするのは魅音の家の電話番号。
「部屋は電話までちょっと距離があったよな……5回……10回鳴らして出なかったら今日はあきらめよう……」
そんな事を呟きながら最後の数字をダイヤルし終わった……
「あ、もしもし園崎さんのお宅ですか? お、いや私前原圭一と申しますが、魅音さんはご在宅でしょうか?」
「え、圭ちゃん?」
魅音だった。
バクバク言って飛び出しそうな心臓を意志の力で無理矢理押さえ込み、乾ききってる喉から振り絞るように声を出して俺は……
「魅音……あ、あのな……こんなの電話で言うのは、その、どうかとは思うんだが……」
「な、なに?」
い、言うぞ! 言え! さぁ、勇気を振り絞れ、前原圭一!
「魅音、俺な……俺……お前のこと……」
- TB-URL(確認後に公開) http://dtany.net/071/tb/
