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伏龍鳳雛's 二次創作

2008/12/19(金) 賽殺し編After~運命は偶然と必然~ 第5話

さらに時は流れ、舞台は平成5年。

大学卒業と司法試験合格、司法修習を経てようやく弁護士の卵になった圭一。
詩音との関係もいよいよ最終章。

そして二人の関係の進展は興宮の魅音にも影響を与えるのであった。

ということで連載作品状態の本シリーズ。大きく物語が動きます。

今回も8千字越えちゃったぜい……前回以上に圭魅バカ一代になってる気もしないでもない今日このごろ(笑)

それでは第5話をどうぞ

圭一と詩音が交際を始めてから5年近くが経過していた。

圭一はその間に無事、司法試験に合格し、司法研修所での厳しい司法修習の日々を送り、詩音は予定通りに短大を卒業し、遠縁の親族が経営する会社にてOLとしての日々を送っていた。
二人の交際はお互いが相手に配慮することを忘れず、また小さくとも一歩ずつ確実に歩むかの如くゆっくりとした順調なものであった。

「お待たせしました、圭ちゃん」
「大丈夫、待つってほど待ってないから。さっき来たところだし」
「良かった。ちょっと会社を出るのに手間取っちゃいましたから」

今日は司法修習を圭一が終えての初めてのデートであった。

「あ、電話でも言いましたけど、司法修習無事の終了、おめでとうございます」
「ありがとう。でもまだどこの事務所に所属するか決めてないんだよね、あははは……そういうとこ俺って相変わらずだなぁと思うけど」
「あははは。でも、ほんとに良かった。大学の卒業も司法試験もそうですし、修習も私が邪魔になっちゃってたらってちょっと心配してました」
「そんな訳あるはずないじゃないか! 今日は正直に言うよ。ずっと側に居てくれてありがとう。こうやって今日を迎えられるのは詩音さんがずっと居てくれたからだって思ってる」
「圭ちゃん、は、恥ずかしいですってば……」

思いかけない圭一の感謝の言葉に頬を染めてうつむく詩音であった。

二人の間のテーブルに圭一は二つの小さなビロードで覆われた箱を置く。

「それって……」
「こっちは、貰った向日葵バッジ。俺が弁護士の資格を得た証だよ。それからこっちは……」

もう一つを手に取ると蓋を開け、中の指輪を見せながら、圭一は耳まで赤くしながら、詩音を見据えて口を開く。

「詩音さん。ずっと以前にも言いました。俺はあなたの側にずっと居たい。あなたにも俺の側にずっと居て欲しい。だからこれを受け取って欲しいんだ……園崎詩音さん、結婚してください」

圭一からの精一杯のプロポーズであった。

「は、はい……喜んでお受けします。私もずっとあなたの側に居たいです。ずっとあなたに居て欲しいです。うれしい!」

圭一を見つめ、頬を染めたまま、詩音は目に涙を浮かべた。

「こ、これはうれし涙ですから心配しないで下さいね。その……泣き虫だし、気弱な所とかいろいろダメな所まだまだいっぱいありますけど、私はあなたに選んで貰えて、あなたを選ぶことが出来てほんとうにうれしいです」
「俺だって……さっきも言ったけど、あなた無しでは今日は迎えられなかったと思う。普通の恋人同士達のような事は出来なかったし、あなたに寂しい思いを何度かさせてしまったけど、ずっとずっとあなただけを想ってきました」

二人は見つめ合い、テーブルの上で手を重ねる。

「ウチの親父とおふくろには今朝、『今日、詩音さんにプロポーズする』と言ったんだ。二人とも喜んでくれたよ。あとは今度の休みを利用して興宮へ行って、園崎の皆さんに報告とお願いしなきゃだな」
「私の家は心配ないですよ。前に行った時にお父さんもお母さんもお婆ちゃんもお姉ちゃんもみんな圭ちゃんの事気に入ってくれてますから……」
「あはは、あの時はちょっと参ったな。いきなり家族扱いされちゃったから戸惑ったよ」
「そうですね。でももうじき本当の家族、ですよ?」
「あ、あぁ……えっと、今日からは……し、詩音って呼んじゃっても良いかな? あはは、まだテレるんだけどさ」
「私も出来るだけ、け、圭一さんって呼ぶようにします……は、恥ずかしいけど」

二人の心は既に夫婦としての生活へと飛んでいるかのようであった。

その日、詩音は初めて自らに課していた門限を破った……圭一と詩音は二人きりで長い時間を過ごし、幸せな気持ちに満たされたのであった。

翌日の夜、詩音は興宮の実家に電話をしていた。
電話に出たのは姉の魅音であった。

「へぇ、そっか! じゃ、彼と一緒に来るんだね、今度は」
「はい、それで日程を決めるのにお父さんとお母さんと出来ればお婆ちゃんも一緒の日の方が良いんです。圭一さ……け、圭ちゃんがもう一度挨拶をきちんとしたいって言ってますし」
「おお、なんだなんだ? 今圭一さんって言いかけたな? あはははは、ついにそういう仲まで発展して、詩音にプロポーズしてくれちゃった訳だ」
「あぁん、もう! 恥ずかしいからその言葉言わないようにしてたのにぃ~!」

からかわれて電話越しでも詩音が顔を真っ赤にして焦っているのが魅音に伝わってくる。

「そっかぁ、二人で来るのは……付き合いだした頃以来だから4年ぶりくらい?」
「そうですね。あははは、『付き合って下さい』って言われて心臓飛び出しそうになりながらやっと返事したら、直後に『それじゃウチの両親に紹介したい。詩音さんのご両親にもきちんと挨拶したい』とか言われて失神しかかったのも良い思い出です」
「なんか凄いよね、結婚前提って訳でもないのに挨拶したいってのも。やっぱりちょっと変わってるって言うか、弁護士目指すってだけに堅いっていうか」
「ほっといて下さい。それよりお姉ちゃんの方はどうなんですか?」
「あっちゃぁ、やぶ蛇だわ、こりゃまいった」

今では代行の肩書きがいつ取れても良いほど、園崎一族の代表、本家頭首としての地位が板に付いてきた魅音にも僅かばかりの悩みがあった。

それは子供の頃からずっとクラスメートであり、友人であった北条悟史との仲であった。
二人はもう10年近くもの間、いわゆる”友人以上恋人未満”の関係を続けていたのである。

魅音自身は悟史以外の男性は眼中に無く、悟史にとっても魅音はかけがえのない存在であり、ごく普通に考えれば恋人としての交際を経て結婚に至ってもおかしくない親密さではあった。
しかし、魅音の立場故か、悟史が積極的な行動に出ることは無く、それ故に魅音も思い切った行動に出ることも出来ず、周囲をやきもきさせる状態が続いていたのである。

「ま、その話はこっち来たときにゆっくり話そうよ」
「はいはい、わかりました。それじゃお父さんとお母さん、それにお婆ちゃんの都合聞いておいてくださいね」
「あいよ、まかしときっ!」

電話を終えた魅音の背に声が掛かる

「電話誰からだったんだい?」

魅音と詩音の母、茜であった。

「あ、母さん。詩音からだよ。今度、例の彼をもう一回連れてくるから父さん母さんや婆っちゃの都合付けて欲しいんだってさ」
「へぇ~、そうかい、そうかい。いよいよ詩音にプロポーズしてくれたって事だねぇ」
「そうみたいだよ。なんか無事に司法修習も終わって、向日葵バッジを貰ったからって事みたい」
「相変わらず、しっかりしてるというか堅いというか……まぁ、そんなお人だからあたしらも婆さまも気に入ってんだけどね。それじゃ、父さんや婆さまにはあたしから話をしておくよ」

茜は母であるお魎の元へ向かった。

「ほう、そうけぇ。圭一くんが詩音を嫁に貰ろうてくれるちゅうて挨拶にきよるんか」
「そうらしいよ。魅音から又聞きだから、あの子の勘違いがなけりゃって但し書きが付いちゃう話だけどね」
「ほんま、しゃもない。よぉ勝手に勘違いしよるでな、魅音は。あれがあるうちゃわしもまだまだ死ねんちゅう気がしよるわ」
「あっはっはっは。そう言っておくれでないよ、母さん。先走るのは園崎の女の証拠さね。詩音がそうじゃないってだけなんだからさ」
「そぉでも詩音が幸せそうならええこっちゃ……後は魅音か。北条のボンズがもうちぃとはっきりしてくれりゃ…の…」

お魎も両親も魅音が悟史を婿に選ぶのであれば反対する気は毛頭無いのだが、いかんせん当の本人達がはっきりしない為に”そろそろ頭首代行に婿を”という親戚筋からの声に困り始めていた。

「そうだねぇ。悟史くんなら魅音の良い支えになってくれるとあたしも思うんだけどねぇ」
「まったく、あの北条とは似ても似つかん優男に育ちよってからに。父親をもうちぃと見習ってくれりゃの」
「ウチの事で腰が引けるほどの根性無しとも思えないし、いったい何が原因なんだかねぇ」
「やっぱし、園崎の娘ちゅうんで腰が引けるんかいのぉ……こないだ北条には『魅音を頼む』ちゅうてボンズに伝えてくれちゅうといたんじゃが……」
「そうかい。けど、こればっかりは二人の踏ん切り次第って所があるからね。詩音の件が良いきっかけになってくれたら良いんだけどね」

その頃、北条悟史自身は自宅で父親と話し込んでいた。

「それで、悟史よぉ。そろそろ踏ん切り付けたらどないや?」
「な、何が?」
「何がや無いわ。園崎のお嬢さんとの事に決まっとる」
「また、その話かい?」
「またって、ええ加減、お前がはっきりさせんと園崎の衆にも迷惑掛かるんぞ? 園崎の跡取りってのがダメなんか? それとも親御さんの組の関係があるからなんか?」
「そんなの関係ないよ! 魅音は魅音だし、魅音の家の事とかご両親の事とかは関係ないよ!」
「ほたらなんでや? しゃもない理由やったらワシが許さんぞ?」

困り果てた悟史は本心を父親にぽつぽつと語り出した。

「僕 は一介の地方出張所勤めの公務員だよ。日々の仕事に追われるだけの他人に対して誇れる能力も無い平凡な男なんだよ……魅音は園崎家頭首代行を立派に勤めて る。いつも元気でみんなの先頭に立っていろいろ頑張ってる。だからそんな魅音と僕なんて、釣り合い取れないんじゃないかって……」
「誰ぞにそう言われたんか? 園崎のもんにでもそう言われたちゅうんか?」
「そんな事言う人は興宮には居ないよ。単に僕が僕に自信がまったく無いんだ……」

父親は息子の奮起を促す為に自らの思いを語り出す。

「好 きおうとるもん同士が付き合うて、結婚するのは当たり前の事じゃろうが! ワシはな、若いウチはほんとうにしょもない男やった。それでもお前達の母さんに 出会って、結婚して、お前や沙都子がワシの子になってくれて……ワシは充分に幸せな人生送っとる。母さんやお前らの事を思えば仕事がキツいんとかいろいろ あっても耐えてやってこれた。」
「うん」
「ホレた女は男を強うするんや。下らん暴力だのなんだのやない。心が本当に強くなる。女もホレた 男と一緒におるだけで強うなるし、ずっとずっと優しゅうなる。園崎のお嬢さんはそれこそ跡取りらしい振る舞いを求められて精一杯やっとる。けどな、時には そういうん無しで心安らかになる時間が欲しいはずや。お前はお嬢さんにそういう時間を作ってやれる立場なんや」
「う、うん」
「そういう幸せをお嬢さんが感じられたらそれはお前も幸せにするんじゃ。そうやってお互いが幸せな気持ちになれるのが家族や」
「僕に出来るのかな……」
「お前はなんぞかんぞあったってワシの息子や。自慢の息子や。じゃから自信持ってええ! お嬢さんの気持ちをきちんと受け止めてやり! ワシが母さんの為に頑張ったようにお嬢さんの為に頑張ったらええんじゃ」
「だけどさ……」

業を煮やした父は悟史に自らの思いをぶつける。

「この間な……園崎のご頭首様と偶然逢うた。そん時にな……『ボンズに伝えてくりょ。魅音をあんじょう頼む』ちゅうて言われたんや。こんなわしに頭下げんばかりでや」
「え?」
「ええか、園崎の他の衆は知らん。けんど本家の衆はお前をきちんとわかってくれとる。お嬢さんの気持ちを汲んでやりたいとも思ってくれとる」
「え、それって」
「釣り合わんなんちゅう事を考えとるのはお前だけちゅうことや。お嬢さんかてお前がはっきりしてくれるのを待っとるんちゃうか?」

悟史は何かを決心したようであった。

「父さん、何もかも僕次第ってそういう事だよね?」
「そうや、なんもかんもお前次第になっとるんや」
「そうか……僕次第か……うん、わかった。もう少し時間は掛かるかもしれないけど、僕はきちんと答えを出す」
「ん、それがええ。けどな、弱気になったらあかん。足りないもんはこれから先、頑張って埋めていけばええんやからな」

悟史の決意は父にもきちんと伝わったようである。
いつもより優しい目をして悟史を見つめる父であった。



「ただいま~」
「お邪魔します」

圭一と詩音は休みを利用して興宮を訪れ、園崎本家に来ていた。

「詩音、おっかえり~。それから圭ちゃんもようこそ! 婆っちゃ達もお待ちかねってやつだよん」
「な、なんか調子狂うなぁ……まぁ緊張が良い具合に解けました。ありがとう魅音さん」
「あるぇ? お姉さんって呼んでくれることになったんじゃないの?」
「ま、まだですってば! もう、ほんとにお姉ちゃんは……」

魅音の先導でいつぞやと同じように圭一と詩音は居間へと向かう。

「詩音です。ただいま帰りました」
「ご無沙汰しております。前原圭一です。本日はご親族の方に申し上げたい事があり、お邪魔いたしました」

廊下に正座し、相変わらず深々と平伏する圭一へお魎が声をかける。

「相変わらずやの……まぁええ、こっちきて座りぃ。だぁいぶ耳が悪うなってな……そがぁな遠いとこで喋られたら聞こえるもんも聞こえんよって」
「待ってたよ、圭一くん。今日は良い話を聞かせて貰えるんだろうね? あははははは」
「茜……煽ってどうするんじゃい……」

以前と同じくお魎を中心に3人が圭一を迎えた。

「いろいろと長きにわたりご心配をおかけしたかと思いますが無事、司法修習生活を終了し、晴れて弁護士資格を得ることができましたのでまずはご報告させていただきます」
「うんうん、この間魅音が詩音から聞いたって報告してくれたよ、おめでとう」
「ありがとうございます。つきましては前回、こちらにお邪魔した際に聞かれた事の答えを申し上げます」

圭一は僅かに下がり、再度平伏して三人に告げる。

「私、前原圭一。先だって詩音さんに結婚を申し込み、ご本人から了承頂きました。若輩ゆえ、いろいろとご不満やご心配もおありでしょうが、詩音さんを私の妻にください。お願いいたします」
「お婆ちゃん、お父さん、お母さん。それにお姉ちゃん。私は圭一さんの妻としてこれから共に暮らして行きたいです。どうか認めてください。お願いします」

圭一の隣に並び、同じように手を付き深々と頭を下げる詩音。
にこやかに、そして穏やかなな表情で圭一と詩音を見守る4人。

お魎が口を開く。

「詩音は……子供ん時にいろいろと可哀想な目に遭わせてしもうた。けんどお前さんと知り合ってからは幸せそうにしとる。このまま詩音を泣かせんようにしたっとくれな。こちらこそ、よろしゅうお頼み申します」

お魎も頭を深々と下げ、圭一に逆に詩音を頼むと願い出た。

「わしの事で君にこの先いろいろと逆に迷惑を掛けてしまうかもしれんが……こちらこそ詩音をよろしく頼むよ、圭一くん」
「あの時からもうあんたはうちの詩音の婿様さね。詩音の事、よろしく頼むよ」
「圭ちゃんはもうあたしらの家族だよ。詩音は泣き虫で気弱な所はあるけど、根っこはあたしらと同じ園崎の女さね。ちゃぁんと圭ちゃんとの家庭を守っていくよ。よろしく頼むね」

両親も魅音も口々に思いを告げる。

「お認め下さり、誠にありがとうございます。不肖私、全力を尽くし、詩音さんを守り、幸せにいたします!」
「お婆ちゃん、お父さん、お母さん、ほんとうにありがとうございます。詩音は圭一さんと共に絶対に幸せになります」

揃って礼を言う圭一と詩音。
うれしさのあまり涙ぐむ詩音であった。

「ところで、勤務する事務所はもう決めたんかいの?」

弁護士としてスタートする圭一の所属事務所をお魎が訪ねる。

「はぁ、恥ずかしながら未だに決めておりません。申し訳ありません、詩音さんへのプロポーズの事ばかり気が行ってしまって……たははは」
「なぁん、さらしかぁ……まぁええわい、婿殿は詩音のことをそんだけ考えてくれちゅうって事やしな」

ふと思いついたように茜がお魎に告げる。

「婆さま、どうだい? 圭一くんを園崎法律相談事務所で預かって貰うってのは?」
「ふん、悪うないの」

突然の申し出に圭一は驚く。

「は、ありがたいのですが、いきなりは先様にご迷惑では?」

茜が返す。

「なぁに詩音の旦那様となりゃ、圭一くんもうちの一族の仲間入りさね。あそこなら民事刑事を問わず経験を積むことも出来る。その上で実力を付けてから独立する方が何かと良いさね」
「まぁ、圭一くん自身の希望もあるだろうし、見ず知らずのところで働くというのは決心が必要だ。一度訪問してみたまえ。話はしておくから」
「あ、ありがとうございます」

そしていつものごとく茜の軽口が始まる。

「そもそも、あそこに勤めるとなりゃ、圭一くんにも詩音にもこっちへ引っ越して来て貰う事にはなるよ。その方があたしらも孫の顔を見る為にわざわざ遠い東京まで出かけなくても済むしねぇ」
「お、お、お母さん!! そんなまだまだ先の話ですよ、孫だなんて!」
「おっと、ごめんよ、あはははは。孫の前に詩音の花嫁姿を見るのが先だったよ! 順番はきちんと守っておくれよ? あははははは」
「あっはっはっはっは。そりゃそうだね! けど、心配要らないんじゃないの? 今まで我慢できてるんだからこれからもさ」
「お、お姉ちゃん!!」

あっけにとられ一言も言えない圭一であった。

圭一と詩音の緊張もすっかり解け、6人の会話は家族のそれとなっていった時、お魎が口を開く。

「魅音……お前の方もええかげん決めてしもてもええんやないか?」
「ふぇ? あ、あたしかい?」
「北条の悟史くんとの事さね。そろそろじっくりとこの先の事を話してみちゃどうだい?」
「え、え、えっとえっと……その肝心の悟史が……」

いつもの元気は何処へやらといった感じで消え入りそうな声で魅音が返事をする。

「魅 音、急かす訳じゃぁないんだよ? ただね、お前ももう婿を貰ってもおかしくない年になってるんだ。詩音もこうやって圭一くんって立派な伴侶に恵まれる事に なった。口うるさい親戚衆も居るんだ。悟史くんとの事、はっきりさせないともうあんた一人の事じゃ済まなくなってきてるんだよ」
「う、うん……それはわかってるんだけど……」
「お姉ちゃん……大丈夫ですって! 悟史さんとちゃんと話をしてみてくださいよ」

困り果てる魅音。

「あ たしはさ……その……悟史以外ってのは考えた事は無いよ。まぁこんな家であたしの立場もあるからあたしが北条へ嫁に行くんじゃなくて悟史に婿さんに来て貰 うしかないってのもよくわかってる。でも悟史には悟史の都合とか考え方もあるんじゃないかって思うとあたしの都合で話がし辛くてさ……」
「だから、お互いの本音って奴を話し合えって言ってるんだよ。相手の事、自分の事を考えて臆病になるってのはわかるよ? けどね、その事についてあんた達は二人できちんと話し合った事あんのかい?」
「えっとえっと……無い……」
「今日、明日決めろって話じゃないさね。けど、あんまりこのままずるずるとってのもそろそろカタ付けて欲しいんだよ、あたしも婆さまもね。まぁこの人は娘の結婚ってだけで結構泡食ってあたふたするタチだから黙ってるけどね、あはははは」

場を和まそうというのか、急に茜は自分の夫に矛先を向けて軽口を叩く。

「茜! 何をいっとるんじゃ?」
「よく言うよ! 圭一くんが初めて来たときも今朝も一番落ち着きが無くてウロウロ、ウロウロ、クマみたいに歩き回って景気の悪そうなツラしてたのはどこのどいつだい?」
「う……すまん」

魅音がようやく落ち着きを取り戻して自分の気持ちを口にする。

「あたしは悟史が良いよ……ううん、悟史じゃなきゃ嫌だ。確かに悟史はちょっとボーっとしてるとこあるし、圭ちゃんみたいに目標持って結果を出してってかっこいいところまだ見せたこともない。だけど、あたしは悟史が良い!」
「だったらその気持ちを素直にぶつけてみなってのさ。良いかい、今ここにいる人間。圭一くんや詩音を含めてあんたの気持ちを無視しようって人間は誰一人いない。それが園崎本家の総意だよ? 急げとは言わないが、出来るだけ早い時期にきちんと悟史くんと話あってきめとくれ」

詩音の結婚話は長い間あやふやな関係を続けてきた魅音と悟史にも影響するのであった。

魅音……雛見沢の子よ……我は知っている。
そなたがどれほどの時間、どのような場合であっても悟史へとその心を向けていた事を。
悟史も決意を固めている。
そなたも同じ。
ならば、何をためらう事があろう……我がそなた達を見守っている事を忘れるな。
オヤシロ様の加護を信じるがよい……


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