▼ 2009/04/18(土) 春・新生活の幕開け
ということで……(何がだよ)
魅音の出てこないお話を書いてみました。
と言っても圭魅バカの書くお話ですからして、圭魅厨臭さいっぱい(爆)
新年度になって魅音の居ない分校での生活が始まります。
前原圭一、部活部長二代目に続いて、雛見沢分校委員長就任のお話を一つ。
それではどうぞ。
昭和59年4月初頭、雛見沢分校では始業式が行われていた。
今年は新入生の入学が無かった為に入学式が無く、始業式のみとなっていた。
「圭一くん? どうしたの?」
「なんか、寂しいもんだな……魅音が卒業して一人減って、それで誰も新しく入ってこないのか」
浮かぬ顔をしている前原圭一を見咎めて同級生の竜宮レナが声を掛けた。
「そうだね……興宮の小学校へ通う子しか今年は居なかったみたいだよ」
「地元にせっかくあんのに勿体ないなと思ってさ。そりゃ知恵先生一人で教えてるんじゃ、親が勉強面で不安になるのもわからなくもないんだけどさぁ……勉強だけが全てじゃないって知った俺が人と違うだけかな」
「勉強は圭一くんも居るからそんなにレベル低くならないと思うんだけどな、だけどな」
雛見沢分校は学年混在で小中一貫で1クラス。
教師は担任の知恵留美子一人。
学習面に関しては小学校の高学年に関しては本年度最上級生となった前原圭一と竜宮レナが知恵の手が廻りきらない時には代わりに指導する事になっていた。
興宮の学校は普通の小学校や中学校であり、通学距離の多さによる手間と時間を除外すれば、環境面での問題は無く、雛見沢在住の一般家庭では親が通勤する際に送っていったり、近所の親同士で送迎するなどしてその問題を解決していた。
中学生では自力で自転車通学をするものも多く、雛見沢分校は生徒数がいっこうに増えない状態が続いていたのである。
「俺たちの後に羽入、その後に梨花ちゃんや沙都子、大樹や傑達が卒業したらどんどん縮小していって俺たちに子供が出来る頃にはもう分校無くなってるかもしれないなぁ……」
(はう~、こうやって無意識に言われると諦めきれなくなっちゃうよぉ……だってレナはまだ……)
”俺たち”という言葉に過剰に反応し顔を真っ赤にしたレナは慌ててそれを誤魔化そうと大きな声を上げる。
「あははは、圭一くんなんかすごいよ、すごいよ? まだ中三なのに子供が出来たらなんて、あはははは。でも圭一くんの子供、きっとかあいいんだろうなぁ、はう~っ!」
「まてまて! お持ち帰りはさせんぞ! 父親の面目に掛けても我が子は俺が守るっ!」
ようやく、笑顔を見せた圭一に一安心するレナであった。
「はい、それじゃぁ全員席に着いてください。これから今年度の委員長選挙をしますよ」
担任の知恵の号令で全員が一斉に着席する。
「それではまず、立候補する人は居ますか?」
知恵が生徒全員に声を掛けるが、立候補者は居ないようである。
その代わりに生徒のほぼ全員が一人の生徒へと目線を向けたのを知恵は見逃さなかった。
「どうやら、皆さんの中では既に新しい委員長が決まっているみたいですね」
そんな知恵の言葉に反応する者が居た。
「魅ぃの代わりの委員長は誰にでも出来るものではないのですよ、みぃ……」
「そうですわ! だからあたくし達は既に心に決めているお一人の方以外には無理だと思ってますのよ」
小学校6年となった、古手梨花と北条沙都子のコンビが声を上げる。
「では、古手さんと北条さんは誰が良いと思っているのか、先生に聞かせてください」
「圭一なのですよ」
「前原圭一さんがふさわしいと思いますわ」
分校最上級生の中学3年生になった圭一の名を揃って挙げた二人だった。
他の生徒達も口々にそうだそうだと声を上げていた。
「最上級生は前原くんだけではなく、竜宮さんも居ますよ?」
知恵は再び、生徒全員に声を掛ける。
名指しされたかっこうの圭一とレナがそれぞれに口を開く。
「えっと、面倒見が良いのはレナの方だし、俺よりもこの学校に長く居る訳だから俺はレナの方が良いと思うんだけどな」
「レナは圭一くんじゃないとダメだと思うかな、かな?」
富田大樹が手を挙げ、発言を求める。
「富田くん、意見があるなら言ってください」
「はい。僕は前原さんが委員長、竜宮さんが副委員長というのが良いと思います。前原さんは僕達のリーダーですので委員長にふさわしいと思います。しかし、竜宮さんがふさわしくないという訳ではありませんから、副委員長に推薦します」
富田と仲の良い岡村傑が手を挙げ、発言する。
「大樹の言う通りです。委員長……えっと前の委員長の園崎さんはとても凄い方でしたけど、お二人ならきっとそれ以上に凄くなると思います」
他の生徒達も口々に賛同する。
知恵はそれらの意見に頷くと圭一とレナに向かって語りかけた。
「前原くん、竜宮さん。皆さんの意見はあなた方お二人に委員長、副委員長をやって欲しいそうですよ」
「レナは圭一くんの委員長に賛成! レナはお家の事とかで時間が取れない事とかあるので副委員長ならなんとか出来るかな、かな」
「えぇ? まぁそりゃ俺は確かに家の事とかそういうんで時間が無いとかはあんまり無いんだけどさ……けど、俺なんかで良いのか、みんな?」
改めてみんなに意見を求める圭一であったが、圭一を除く全生徒は期待に目をキラキラさせて圭一を見つめ返すのみであった。
頃合いが良いと判断した知恵が結論を出した。
「それでは、本人の前原くん以外全員一致で委員長には前原くん。前原くんを補佐する副委員長に竜宮さんということで反対意見は無いですね? 決定しますよ?」
「しゃーねぇ! 男、前原圭一、みんなにそう望まれたからにゃ目一杯頑張って、委員長の中の委員長、”ザ・委員長”目指してやろうじゃねぇかっ!」
「うん! 頑張って圭一くん。レナも出来る限り応援するし手伝っちゃうんだよ、だよ」
生徒全員が嬌声を上げて喜びを表現する。
ほんとうに前原くんは人気者ですね……と思いながら、知恵は圭一とレナに声を掛ける。
「それでは前原くんと竜宮さんにはお話がありますので職員室へ来てください。他の皆さんは教室で静かに待っていてください」
職員室へ向かった知恵、圭一、レナを除く全員は教室で思い思いの会話をしていた。
「羽入、あんたしっかりしなさいよ? 圭一とレナが卒業したら今のところあんたが最上級生なんだから」
「あうあうあうあうあう? 来年の話なのですよ? 梨花が何を言ってるのかよくわからないのです」
「もう、羽入さん。今からお準備されないと来年慌てても難しいんですのよ?」
羽入はこのとき、梨花に対する一時の感情で年上として実体化した事を激しく後悔していた。
(あう……年上として実体化すれば梨花にあれこれ偉そうに言われなくて済むと思ったのに誤算だったのです!)
「わかりましたのです。明日いえ今日から僕は圭一にぴったりとくっついて圭一の全てを盗むのです。見事に圭一の次の座を勝ち取るのです! ついでに圭一のハートもぬひゅ……いらいのれふいらいのれふ! ひぃかぁ、ひゃおをひっふぁらないれぇ」
あまりにも空気の読めない言動にムカついた梨花が両手で思いっきり羽入の頬を引っ張っていた。
「空気の読めないとこだけは魅ぃに並んでるわね、このダメ甘党は……」
「梨花ぁ、あんまりいじめては可哀想ですわよ」
「みぃ? 羽入が圭一のハートを盗むとかふざけた事を言いやがるのでお仕置きをしていたのですよ、にぱ~★」
「あら、それは厳しいお仕置きが必要ですわね、今夜は春先ですけれど超激辛キムチ尽くしにいたしましょうかしら……」
青くなった羽入は謝罪を平身低頭繰り返す。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
「いつかどっかで聞いたような謝罪は結構でございますわよ、羽入さん! 大事なのは圭一さんご自身がまだ気が付いてらっしゃらない今だからこそ、わたくし達は、圭一さんの事で魅音さんを悲しませるような行為をしないということですのよっ!」
「以後、気をつけますのです、あう~」
ヘタレ・鈍感・ノンデリカシーの三冠王とも揶揄される圭一である。
昨年の秋、魅音の受験対策開始以降、圭一自身が全くの無意識のうちに魅音への好意を見せるようになった事を敏感に察知したレナ、梨花、沙都子、羽入の4人は圭一が自身の本当の気持ちに気が付き、見事に魅音と結ばれるその日まで見守り、応援することを密かに誓い合っていたのだった。
とはいえど、4人が4人とも未だに圭一を素直に諦めきれて居ない為に、無意識に言動に表し、残りの3人に口やかましく注意されることもまれにあった。
特にその言動が天然極まりない羽入がもっぱらその対象となっていたが、梨花の場合は計算尽くで羽入以外に気取られないようにしていた為、表向きはまったく注意された事がなかった。
レナと沙都子は非常に自己を厳しく律し、誓い合ったその日から極力、本心を表にださないようにしていた。
とはいえど、春休みの部活の最中などにはついつい、圭一に気が行ってしまうことも無かった訳ではない。
部活メンバーは今日も始業式後に弁当を食べ、午後から部活をするということになっており、全員が弁当持参であった。
もちろん、この時間だけは圭一への好意を弁当のおかずに込めても咎められない為に全員がそれぞれある意味で会心の出来の弁当を持参しているのであったが……
ようやく、知恵達3人が戻ってきた。
「それでは今日はここまでにします。明日からは普通の授業ですから遅刻したりしないようにしましょうね。特に前原くん。あなたは本校を代表する委員長なのですから、他の生徒の模範になるよう行動してくださいね。それでは委員長、号令を」
「了解です、知恵先生! それでは一発目だぜ! きり~つっ! きをつけ! れいっ!」
他の生徒達は帰宅するなか、部活メンバーは机を寄せ合い、弁当タイムに突入していた。
「さぁ、飯だ飯だ~、机をくっつけろぉっ!」
「くっつけるのですよ~、ぺた~☆」
「今日は新年度記念でちょっとレナ、頑張っちゃったんだよ、だよ」
「わたくしも負けていませんですのよ~」
「僕も頑張ったのです」
わいわいといつもの如くおかず争奪戦を交えながら楽しく食事が続いて行く。
「にしても魅音の奴、入学式には遅刻無しで行ったんだろうな?」
「大丈夫だよ、だよ。いくらなんでも入学式から遅刻はしないと思うんだよ?」
「でも、魅ぃと圭一はよく肝心な時にヘマしやがるのですよ」
その頃、入学式を終えて、興宮の実家で魅音は派手にくしゃみをやらかし、茜や詩音の笑いを誘っていた。
「そういや、今度の週末くらいには桜咲くかな?」
「古手神社の展望台の桜は多分大丈夫なのですよ」
「そっか……それじゃ、魅音の都合やみんなの都合もあるけど、魅音の無事の入学祝いを兼ねてパーッと全員で揃って花見とかしないか?」
突然の提案ながらメンバー全員が賛同する。
「いいね、いいね! レナさんせ~い! はりきってお花見弁当作っちゃうよぉ~」
「あら、圭一さんにしては良いご提案ですわね」
「レナ、レナ~、あま~いお菓子も作って欲しいのです!」
「どうせなら喜一郎達年寄りも呼んで交流会にするのが良いのです。圭一委員長のお披露目なのですよ!」
様々な提案が飛び交っていた。
皆がそれぞれに思いを馳せ、想像し楽しそうであった。
暖かさを増し、咲き誇る桜の下での村を挙げての大宴会紛いになってしまった花見は大盛況となり、その場で酒に酔った公由喜一郎の些細な一言がきっかけで大騒ぎが巻き起こったのはまた別のお話……
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