▼ 2009/05/10(日) 夏遠からじ Part1
ちょいとまとまったモノを書こうかと思ったら、いろんな意味で力尽きた本日(苦笑)
嵐を呼ぶヘタレ、雛見沢三冠王:前原圭一が行く!シリーズ化しつつある昨今。
とりあえずのPart1。
続きは来週以降かな(^_^;)
それではどうぞ
初夏の訪れを感じる新緑が目にまぶしい、昭和59年の5月。
いつもの如く、生徒達の元気な嬌声が溢れる雛見沢分校の教室内。
みんながめいめいに机をくっつけ合い、持ってきた弁当を囲む昼の風景である。
「お、最近沙都子は料理の腕、上げたんじゃねぇか?」
「あら、圭一さん如きの舌で違いがおわかりになりますの?」
「へぇへぇ、どうせ家事音痴の俺じゃほんとの味なんかわかりゃしねぇよ! ったくせっかく誉めてやってんだから素直に喜びやがれっての」
ひときわ大きな声を上げているのは、この雛見沢分校のクラス委員長、前原圭一である。
その圭一に小生意気な返事をしている少女は北条沙都子。
沙都子の同居人でもある古手梨花、羽入、圭一の同級生にしてクラス副委員長の竜宮レナを加えた五人はいつものように机をくっつけ、お互いの弁当をつつきあって昼食を楽しんでいた。
「沙都子は最近、レナにも料理を習ってどんどん上達しているのですよ。ボクはそのうち取り残されてしまうのです、みぃ」
「あはははは。梨花ちゃんは元々上手じゃない。それに梨花ちゃんも羽入ちゃんも沙都子ちゃんに負けないくらい頑張ってるとレナは思うな、思うな」
「もう少し、辛い物を減らして甘い物を増やしてくれたら僕は言うこと無しになるのです。梨花はそもそも無意味に激辛調味料を使いたがるのです!」
圭一の弁当は彼の母親の手作りだが、残りのメンバーは自分達の手作り弁当を毎日持参である。
圭一もなんどか仕事で両親不在の際に自作弁当を試みた事はあるものの、その出来映えを他者に誇るどころか完成すら満足にしない事も多く、昼休み開始と同時に職員室にカップ麺用のお湯を貰いに行く始末である。
ヘタレだのノンデリカシーだの鈍感だので三冠王と異名を取る圭一だが、家事のダメっぷりでも群を抜き、四冠王と呼ばれるのも目前となっていた。
そんな圭一だが、実は一緒に昼食を摂る彼女たち全員に密かに想いを寄せられている。
それゆえ、圭一が弁当を持って来ることができずカップ麺を持参してきても、それを見越して圭一の分まで作ってきている彼女たちの弁当を分けて貰うことで食生活は充実していたのだ。
両親不在の際には半ば競い合うようにして彼女たちが夕食を作りに訪れ、翌日の朝食や弁当までも作っていくこともしょっちゅうであった。
「いや、しかしほんとに俺ってみんなに世話になりっぱなしだなぁ……なんとかしなきゃとはずっと思ってるんだけど、元々才能無いらしくて、こればっかりはにんともかんとも……」
「あはははは。そんな事気にしなくたって良いよぉ。圭一くんは圭一くんにしか出来ない事でい~っぱい、レナ達を助けてくれてるんだよ、だよ?」
「そうなのですよ。圭一はダメな所もいっぱいあるけど、圭一でなければならない良いところもいっぱいいっぱいあるのです」
「だいたい、そんな事を気にしてるなんて圭一さんらしく無いんじゃございませんこと?」
「圭一? 遠慮せずとも良いのですよ? 僕達は圭一が喜んでくれるから一生懸命に作ってくるのです。美味しいと言ってくれるだけでも僕達はちゃんと満足出来るのですよ」
圭一的にはいくら仲間だからってここまでみんなに世話をして貰うということに後ろめたい気持ちがあった。
なにせ、彼は自分がみんなから思いを寄せられているという自覚がまったく無いからである。
「そうは言ってもな。ここに越してきてもうすぐ丸一年になろうってのにずっと世話になりっぱなしだからなぁ。俺もちょっと調子に乗って当たり前みたいな感じになってきちゃうしな。去年の暮れだって結局みんなにずっと面倒見て貰っちゃったしさ。そろそろまずいんじゃないかという気はしてきた。それに勉強の面倒見るくらいで恩返し出来たとも思えんぞ」
小さく溜息をつきつつ、レナや梨花は心の中でぼやく。
(勉強の事だけじゃないんだけどな、けどな)
(ほんっとに鈍感だわね……そもそもちょっとやそっと助けて貰ったからってみんなここまで親身になりゃしないわよ……)
「ということでだ! まぁこいつはおふくろからの提案でもあるんだが……今度の休みにみんなしてデイキャンプでも行かないか?」
「デイキャンプ、ですの?」
「おう、朝集まって出掛けて、飯盒でご飯炊いて、まぁあとはカレーでも作ってみんなで食ってって感じでさ」
「圭一! その言い方はマズいのです! あうあうあうあうあう~っ!」
その時、バタバタと足音がして教室のドアが大きく開け放たれた。
「誰か今、カレー”でも”とか不遜な事を言いませんでしたか?」
現れたのは自他共にカレー好き、カレー崇拝者、カレーの伝道師であると認める担任の知恵留美子であった。
やや恐怖に駆られた表情で生徒達は全員一斉に圭一の方を向いた。
「ま、まて! まてまて! みんなちょっとまて!」
「前原くん! ちょっと職員室まで来なさい。カレーの大切さについて少し、先生とお話しましょう!」
「うわっ、ちょっ、やめ……」
まるで猫のように首根っこを掴まれ、半ば引きずられるようにして圭一は職員室へと拉致されていった。
「無様ですわね……」
「みぃ、不注意にもほどがあるのです」
「はう~……これじゃ今日の午後は圭一くん使い物にならないね」
「多分、カレー菜園で草むしりもセットなので、部活もできないのです、あう……」
カレーに関して知恵の怒りを買った場合、カレー説教と呼ばれるカレーに関する説教を延々とされ、疑似洗脳状態に陥り、放課後には知恵が管理しているカレーの材料が栽培されている菜園の手入れをやらされるのがこの分校の常であった。
以前はともかく、最近では圧倒的に不用意な発言の多い圭一が集中的にカレー説教の餌食になるケースが多発していた。
「でも、デイキャンプはなんか楽しそうだよ、だよ?」
「そうですわね。皆さんとご一緒してというのはとても楽しそうだと思いますですわ」
「圭一は飯盒でならご飯をちゃんと炊けるし、キャンプ場でだけなら何故かカレーを上手く作れるという話なのです」
「圭一の手料理が食べられるこの上ないチャンスと言うことなのですよ、にぱ~☆」
全員の目がギラっと妖しい光を放ったような気がして、話題に参加しようとして近づいていた沙都子や梨花の同級生コンビ、富田大樹と岡村傑は背筋に寒い物が走った。
「それじゃ決まりかな、かな?」
「あ、でも魅音さんやねーねー……詩音さんも誘った方がよろしいんではございませんの?」
「魅ぃと詩ぃを誘わないと後で地下祭具伝へ連れ込まれる気がするのです。怖い怖いなのですよ、にぱー★」
「カレーは甘めのを作ってくれるとうれしいのです。リンゴとはちみつたっぷりがいいのです!」
おずおずと大樹と傑も声を掛ける。
「ぼ、僕達もそれに参加したいなぁっと思ってるんだけど」
「ダ、ダメかなぁ?」
それを聞いてクラスの大半が騒ぎ出した。
「いいなぁいいなぁ!」
「私達もいきたぁ~い!」
あっと言う間に教室中がわいわいとその話題で持ちきりになってしまった。
圭一は基本的に分校のみならず、雛見沢全域、果ては興宮でも知る人ぞ知る有名人である。
明るく、ややお調子者でありながら、人を気持ちよく乗せる事に長け、まっすぐで責任感が強く、自らが先頭を切って何かに立ち向かうことを厭わない。
老若男女問わず、圭一を知る者は彼を認め、好ましく思うのであった。
そのせいか、人気者、噂の男、圭一が関わるイベントは常に大人数になり、大騒ぎになる。
足を運んだ人々全てが楽しんだり満足出来るようにといつも圭一が一生懸命工夫を凝らすからでもあった。
「はう~、またお花見の時みたいに大騒ぎになっちゃうのかな、かな?」
「分校の遠足状態になってしまいそうなのですよ、みぃ……」
「やっぱり圭一はみんなのリーダーなのですよ。圭一が何かやると必ずこうなるのです」
「はぁ……あまりの大人数ですと圭一さんのお父様やお母様にご迷惑になるのではありませんこと?」
完全に分校の全生徒が参加する気満々で気勢を上げる結果になってしまった。
「これ見たら、圭一くんの事だからまた勢いで『おう! 全てこの前原圭一様に任せとけ!』とか言っちゃうんだよ、だよ」
「わたくし達でフォローして差し上げませんとまたお一人でムチャしそうですわね……」
「仕方の無い人……でも、そんな圭一だからみんなが圭一の周りに集まるのだけれど……」
「ここまで大きな事になると魅音と詩音の手助けも絶対に必要なのです」
教室に戻った圭一を待っていたのはクラスメート全員の期待に満ちてキラキラとした目。
事情を聞いた圭一は、レナの予想通りにいつもの如く全部任せろとタンカを切ってしまい、クラス全員でのディキャンプが決定してしまった。
午後の授業終了後に事情説明を聞いた知恵と相談を受けた校長の判断で、ディキャンプを学校外学習の一環として行うことが決定されたのであった。
続く
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