▼ 2009/06/06(土) 夏遠からじ Part3
相変わらず突発的に時間が空いたり詰まったりで安定しませんが(;^_^A)
夏遠からじ Part3をお届けします。
舞台はエンジェルモートへ
久々の魅音詩音を交えての打ち合わせ風景なんぞを
ペースがゆっくりしてるのは単にノープランにその場でネタを転がしてるから(爆)
次回あたりでやっと本筋のディキャンプ突入予定(苦笑)
それではどうぞ
夕暮れも近い、興宮。
今日も今日とて怪しげな風体と行動の集団がたむろす一部特定の嗜好の方にめっぽう人気の地元ファミレス「エンジェルモート」店内。
忙しく歩き回るあまりにもウェイトレスと呼ぶには露出の多いセクシーな衣装に身を包んだ女の子達とそれをやに下がってハァハァと不気味な呼吸で見つめる常連達。
一種の静寂を破るようにドアベルが鳴り、前原圭一と竜宮レナの二人が入ってきた。
「とりあえず2名。後からもう2名来る予定です」
「はい、かしこまりました。それでは”いつもの”お席へどうぞ」
圭一達が来店した場合、二人程度であったり家族と一緒の場合は空いている席に適当に案内されるのであるが、大抵は部活メンバーが揃ってだったりすると大騒ぎをするのが常であった。
よって、ウェイトレス間で暗黙の了解として店の奥、窓際の比較的他席から隔離されている席に案内することになっているようだった。
もっとも家族連れであっても圭一の場合のみ、父親との二人だとこの隔離席行きなのは言うまでもない。
先導して席へと案内をするウェイトレスの後ろをついて行きながら圭一とレナは会話を交わす。
「”いつもの”って言われちゃったんだよ、だよ!」
「まぁ……しょっちゅう来ていつも同じ席だし、俺たちは結構騒ぐからな。指定席みたいになっちゃってるんだよ、たはは」
「常連さん中の常連さんだね、だね」
涼やかに笑いながら、ハシャぐように圭一に話しかけるレナ。
周囲の怪しい集団から”また女連れだぜ、K! うらやましすぎるぞ、K!”とでも言わんばかりの殺視線をさりげに流しつつ席に着く圭一であった。
「これで後でさらに園崎姉妹が合流と知られたら、こいつらに嫉妬で呪い殺されかねんな」
「圭一くん、相変わらず思ってる事全部喋っちゃうクセ、ほんとにそろそろ直した方が良いと思うな、思うな」
「げっ、またやっちまったのかよ?!」
圭一はついつい、心の底で思ってる本音を無意識に口にするクセがあった。
まさに一人勝手にサトラレ状態である。
もちろん、圭一の独り言を聞き逃さなかった通称雛見沢中隊と呼ばれる常連達は、血涙を流さんばかりの怨みと嫉妬の籠もった殺視線を圭一に浴びせていた。
席に着いた二人はとりあえずドリンクとケーキのセットをそれぞれオーダーする。
「魅ぃちゃんや詩ぃちゃんにあうのはこの間の部活以来だね、だね」
「あぁそうだな。なんだかんだで忙しいから滅多に会わなくなっちまったもんな」
「寂しい?」
「ん? 寂しいっていうか居て騒いでるのが当たり前みたいなとこあるからな。気が抜けるって言うかなんちゅうか、にんともかんともだな」
園崎姉妹は雛見沢はもちろん、興宮、鹿骨市一帯を中心にN県全体の政財界に多くの人材を輩出している園崎家の娘であり、双子姉妹である。
現在は高校に進学し、別々の学校に通うようになっているが、魅音は昨年度まで圭一達と同じ雛見沢分校に通う仲間であり、初代部活部長兼クラス委員長でもあった。
また、学校は違うが詩音も雛見沢には良く顔を出し、圭一やレナ達部活メンバーの仲間の一人である。
レナは気が付いていた。
高校進学以来、あまり部活に魅音が参加することが出来なくなって、魅音が参加した日とそうでない日で圭一の燃え方が大きく違う事に。
(ほんとうに自分の気持ちにまで鈍感なんだから……こんなだからレナ達が逆に困っちゃうじゃない……)
圭一には届かない心の声でついついボヤいてしまうレナであった。
「で、一応今日話した通り、後は道具関係だけなんだよな、足りないの」
「そうだね。結構みんなのお父さんお母さんも参加してくれるらしいから、大人の人はそれなりの人数が付き添ってくれそうだもんね」
「しっかし、なんでこんな大事になっちゃったんだか」
「圭一くんの自業自得なんじゃないかな、かな」
「う、すいません……」
元々は圭一が部活メンバーを誘って軽くデイキャンプをするつもりでいた。
ところがそれを聞いたクラスメートのほとんどが自分達も参加したいと言いだし、お調子者でもある圭一が軽々しくいつものように”おう、この俺に全部丸ごと任せとけ!”とタンカを切ってしまい、気が付けば担任の知恵留美子や生徒達の親も巻き込んだ遠足になってしまったのである。
当然それだけの大人数ともなれば前原家にあるディキャンプの道具だけでまかなえるものではない。
従って、こういったイベントに呼ばないと後が怖いというのも手伝い、こういった事の準備に関しては特にその調達スキルを発揮する魅音と詩音に相談することになったのだ。
「待ったぁ? 園崎魅音ただいま参上! がははは」
「はろろ~ん、圭ちゃんとレナさん相変わらずお元気そうですね」
少し遅れて、園崎姉妹が現れた。
「おう、悪いな二人とも呼びつけちゃってさ」
「気にしちゃいけませんよ、圭ちゃんからの呼び出しだったらお姉は鬼婆が死にかけててもきっと応じますから」
「し、ししし詩音! あ、あんた何言ってんのよ! それに婆っちゃが死にかけとか縁起でもない!」
登場早々から騒がしい双子姉妹である。
しかし、この騒がしさは二人の仲の良さを物語ってもいた。
「それで相談って何さ? なんか詩音の話が要領得なくってさぁ」
「まぁ俺もあんまりきちんと説明してなかったからな、すまん。ようはこういう事なんだよ……」
と圭一は事態の推移を説明し、参加と支援を頼みたいことを告げた。
「へー、ディキャンプ方式の遠足かぁ、楽しそうでいいね! おじさんも是非参加させて貰うよ。道具の手配も任せておいて! で、詩音はどうすんの?」
「私も別にその日特に都合が悪い訳じゃありませんし、沙都子と久しぶりに一日過ごせますから参加しちゃいます」
「よかった~! 魅ぃちゃんと詩ぃちゃんが参加しないとレナはすっごく寂しいもん! うれしいな、うれしいな」
安堵の表情を見せる圭一。
「ふー、助かったぜ! いつもの勢いで話がデカくなっちゃって実際のところ結構困ってたんだよな」
「相変わらず、威勢が良い割にノープランで、ヘタレますねぇ、圭ちゃんは」
いつもの如く、圭一の言動をネタに詩音が圭一を弄る。
「ちょっと詩音、その言い方は圭ちゃんに失礼じゃん! そういうとこも含めて全部圭ちゃんなんだからさ!」
「はいはい、相変わらずというかお姉は圭ちゃんに甘いですねぇ。こういうのを”ホレた弱み”ってんですかね、レナさん?」
「あはははははははは。レナは詩ぃちゃんが何を言ってるのか全然わからないんだよ、だよ? 魅ぃちゃんもそれ圭一くんの事誉めて無いんじゃないかな、かな?」
一瞬、レナの目が大きく見開かれたので魅音と詩音は少しビビってしまった。
(レナ……怖いよ、その言い方……)
(う……レナさんはやっぱりちょっと苦手ですね……)
この雰囲気を作った元凶、圭一はコップのお冷やをぐいっと飲み干すと
「ちょっと俺トイレ行ってくるわ」
とまったくテーブルを覆う冷たい空気に気が付くこともなく、席を立ってしまった。
「詩音、お願いだから圭ちゃんの前でああいうの辞めてよ、ほんとに。変に意識しちゃうじゃんお互いに」
「すいません。これお姉達の公平な勝負なんでしたね」
「詩ぃちゃんも悪気があった訳じゃないから良いんだよ、別に」
ほとんどもう勝負は決してるんだけどなと思ってもまだそれを素直に口にはできないレナであった。
「でも、よかった。魅ぃちゃんも詩ぃちゃんも参加してくれて。二人が来ないと確かにレナは寂しいし、梨花ちゃんや沙都子ちゃんや羽入ちゃんも寂しがるんだよ、だよ。でも一番元気が無くなっちゃうのは圭一くんだから……」
「ふぇ? 何? 圭ちゃんが元気無いってそんなことないでしょ?」
「ううん、魅ぃちゃんが居ると居ないとで圭一くん、全然元気の度合いが違うんだよ、だよ? 圭一くんは雛見沢に引っ越してきてから魅ぃちゃんが居るのを当たり前だって感じてたから4月になってから魅ぃちゃんが居ない日が続いてて、まだ慣れて無いみたい」
レナはある種の決意を持って、普段の圭一の日常を魅音と詩音に告げた。
「レナさん、それって……」
「うん……まだまだ余地はあると思うけど……ね」
「レナと詩音が、な、何を言ってるのかおじさん、よ、よ、よくわかんないや、あは、あははは」
若干の挙動不審な姉の姿を見て、詩音は内心嘆く。
(自分が優位になってるって言われて動揺するってどんだけお子ちゃまですか、お姉は……それにしても、こうなってもまだまだレナさん達も諦めてないって事ですね。お姉の完全勝利まではけっこう掛かりそうですね、こりゃ……)
「そうそう、このディキャンプでね、でね。圭一くんがみんなにカレーを作ってくれるんだよ、だよ!」
「え~、圭ちゃんの作るカレーって……ちゃんと作れるの? 前に分校でやったカレー勝負の時だって上手く出来ないからって富田くんとか岡村くん利用してルー誤魔化してたじゃんさ!」
「今回は部活じゃないし、おじさまとおばさまが手伝うから大丈夫みたいなんだよ」
「そ、そっか……け、圭ちゃんの手作りカレーが食べられるんだ、そそそそっか。う、うんあの時だってご飯はちゃんと炊けてたもんね。炊飯器でご飯炊けないのに飯盒では炊けるって圭ちゃんも変だよね、あは、あははははは」
何故か、圭一の手料理を食べられると聞かされて激しく動揺する魅音であった。
「お姉、レナさん! 二人ともまさかそのカレーを巡って部活で勝負とか言い出さないでくださいよ?」
「げっ、なんでわかったの詩音?」
「する気なんですか? どんだけ空気読めないんですか、お姉はっ? こういう機会なんて滅多に無いから独占したいのはわかりますよ? けど、せっかくの機会に部活持ち込んで台無しになっちゃったらどうするんですか?」
魅音のあまりにも魅音らしい言動にとうとう詩音が呆れて声を荒げた。
「詩ぃちゃん、そんなに怒っちゃダメだよ。魅ぃちゃんもこれは部活じゃないんだよ、だよ? そりゃレナ達だって独占出来るもんならそうしたいけど、今回はそういうイベントじゃないと思うんだよ」
「ごめんなさい、レナさん。ちょっとお姉が違う方向に積極的だから少しイラっとしちゃいました、てへ」
「てへ じゃないよ、まったく! あたしゃビビっちゃったじゃないさ。それとごめんね、レナ。ちょっと勢いで言っちゃったよ、がはは……」
天下無敵の園崎姉妹ながら、まさに竜宮レナこそがこの二人の天敵なのかもしれなかった。
「おう、悪い悪い。そんじゃ打ち合わせ続けようか」
戻ってきた圭一が居ない間にあったことなどまったく気にもせず打ち合わせを始めた。
「材料は前の日にセブンスマートで買いだして、道具と一緒に葛西に運ばせましょう。人数が多いですからそれなりの量になっちゃうでしょうし」
「そうだね、買い出しは……レナとかあたしがやるのが良いかねぇ……どうせ、圭ちゃんはカップ麺の目利きくらいしかできないんだし、あっはっはっはっは」
「ぐはっ! 言われた! 心にぐっさり突き刺さった! もうダメだ、俺立ち直れないかもしれない」
「大丈夫なんだよ、だよ。圭一くんに生活力が無いのは雛見沢の人みんなが知ってる事だから」
「レナさん、それトドメ刺すつもりで言ってますか?」
ワイワイと楽しげに打ち合わせが続いて行く。
ディキャンプ形式の遠足はとても楽しくなるだろうなと四人が四人とも思っていた。
続く
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