▼ 2009/03/07(土) いざ、勝負
ご無沙汰しております。
最近、愛機Thinkpad X41が電源関係でダダこねるもんですからさっぱりまともに書けてないという(苦笑)
この作品は3月1日の”魅ぃの日”にオープンさせました「i-love-mion.net | ”園崎魅音が好きだ~っ!”な人達のポータルサイト i-love-mion.net」のオープン記念兼”魅ぃの日”記念の作品です。
まぁいつもの「三冠王シリーズ」にして時間軸と設定を同じくする圭魅シリーズの一本です。
いよいよ決戦、勝負の日とも言うべき魅音の受験当日を書いてみました。
それではどうぞ!
「筆記具良し! 受験票良し! 準備オッケーってとこかな」
「魅音、準備は出来てんのかい?」
「ばっちりさね!」
昭和59年、2月某日の事である。
今日は園崎魅音にとっての勝負の日、高校受験当日である。
夏休み直前までは合格の望みすら全くなく、どうしたもんだろうかと周囲の気を揉ませたものであったが、夏休みからの集中的な前原圭一による家庭教師、担任である知恵留美子の創意工夫、本人が突然やる気を出した事が相乗効果を生み、現在では致命的なミスでも犯さない限り合格可能なレベルに到達していた。
遅刻もなく、会場に到着した魅音は急に落ち着きを失いソワソワし始めていた。
生来、突発的な出来事に弱く、おおよそ臨機応変とはほど遠い魅音である。
事前に予測し、充分な対策を施し、戦略的に負けの要素を除外した上でようやく戦術的な能力を発動させられるといった体たらくであった。
”受験”という行為が人生で初めてであること。
自分の現時点の学力がここ半年程度の付け焼き刃では無いかという不安。
自分の受験突破の為に周囲にいる多くの人間の手を煩わせ、それに報いるだけの結果を出さねばというプレッシャー。
不安とプレッシャーはいつもの”天下御免の園崎魅音”、”鷹の目を持つ園崎家次期頭首”の仮面をひび割れさせ、弱気で凹みやすくナイーブな素顔を剥き出しにさせようとしていた。
”今にも足下が崩れ落ちてポッカリと穴を空け、底なしの暗闇に自らが落ち込むのではないか?”とすら思うほど、今の魅音は平常心を完全に失いはじめていた。
「うぅ、まずいなぁ。お腹痛くなりそうだよ……」
独り言も増え始めたその時……
「なぁにガチガチになってんですか、お姉?」
「し、ししししお~ん、あ、あんたなんでここに?!」
「なんでって私も受験に決まってるじゃ無いですか? お姉、試験前にもう燃え尽きちゃってボケてるんですか? ボケなんて本家の鬼婆一人で充分ですよ!」
双子の妹、園崎詩音も当然ながら同じ高校を受験するのだったとようやく思い出す魅音であった。
「あ、あははは……そういえばそうだったね、なぁにあたしゃ舞い上がってんだろうねぇ……」
「ほんとですよ、まったく。戦う前から負けみたいな顔しちゃって。ほんとにしっかりして下さいよ?」
魅音と対照的な詩音。
彼女はどちらかと言えば、生来が臨機応変を常とし、事前にはざっくりとプランニングするだけの行き当たりばったりに近い行動が得意であった。
一卵性の双子で有りながらまさに真逆な姉妹だった。
詩音自体は祖母お魎の指示で進学した聖ルチーアを脱走したり、その後に転校した興宮の学校も自らの気分や雛見沢分校へ出掛けるという理由でサボり続け、夏前までの学力は魅音とどっちこっちのレベルであったが、要領の良さ故か本人の目的意識の芽生え故か、夏以降真剣に受験対策に挑み、これまた致命的ミスでも無い限り充分に合格圏内にまで達していた。
「きちんと勉強してきたんですから大丈夫ですって! もう、何ビビっちゃってるんですか?!」
「そ、そうだよね。あ、あははは……」
「仕方無いですね……お姉! ちょっとこっち来てください!」
半ば強引に魅音の手を引いて人目の無い物陰へ連れて行く詩音。
詩音は魅音の顔を両手で挟んで額をくっつける。
「お姉? ううん、『詩音』、大丈夫だから! あんたはやるべき事をきちんとやった! それは鬼婆もお母さんだって認めてるじゃないですか!」
「お姉ちゃん……」
「知恵先生だって太鼓判押してくれたんですよ? それにそもそも、自分の時間の大半を裂いてまであんたの勉強見てくれて手伝ってくれた圭ちゃんが”もう大丈夫だ! このままだったら合格できる! 俺を信じろ! この前原圭一をなっ!”ってそう言ってくれたんでしょうがっ?!」
「う、うん……」
詩音は魅音を奮い立たせるべく言葉を紡ぐ。
「あんたは大丈夫! 私だってそう! ちゃんとやることやってきたんですから! ちゃんと受かって圭ちゃんを待つんでしょ?」
「う、うん。そうだね……うん!」
「それから、ほらこれ! お姉の愛しの圭ちゃんから預かった手紙です」
「え? え? なんで詩音が持ってんのよ?」
「お姉の事だからきっと土壇場でヘタレ丸出しになるから、もしもの時にって夕べ預かったんです」
魅音はその手紙を開き読み始める。
見慣れた、がさつで上手とは決して言えない、しかしそれでいて目にするだけで心が温まり勇気がわいてくる気がするような、いつもと変わらない圭一の字であった。
”前略
これを試験前に魅音が読まないで済んでいれば一番いいのだけれど、きっとお前のことだからまたマイナスな事ばっか考えて、凹んでるんじゃないかと思い、これを書いています。
あぁもう、こういう手紙で形式ばった事書くのはヤメヤメ! 俺には似合わないしな!
あのな、魅音。
お前は充分に合格可能なところまでちゃんと実力をつけてるんだからさ、焦んじゃねぇよ。
知恵先生だって大丈夫だって言ってたろ?
お前のことだから多分、自分の実力がきちんと受け止めきれず不安になって、そんでもって失敗したら知恵先生とか俺とかに迷惑が掛かるんじゃとか婆さん怒らせてケジメだっけか、取らされるんじゃないかとかそんなプレッシャーでヘタレてんだろ?
バァーカ!
ほんっとお前そういうとこダメだよな?
知恵先生も俺もいい加減な気持ちでお前に大丈夫って言った訳じゃねぇよ。
だから安心していつもの明るい何事にも負けない魅音でいろって。
前に言ったろ?
二人で組めば世界征服だってできるってよ!
こいつはその第一歩なんだからよ。
雛見沢分校はもう俺たちの支配下だし、雛見沢全体はもう統一支配したも同じじゃねぇかよ。
今度は興宮征服の手始めにその高校を支配するのだ、わっはっはっはっは!
そういう訳だ、失敗したらどうしようなんて考えるな。
成功した時のことだけ考えてろよ。
心配するな、もしもの時は俺も一緒にくたばってやるって。
授業が終わったら部活メンバー全員でエンジェルモートで待っててやるから、戦果報告きちんとしにこいよ?
それじゃな!
がんばれよ、魅音!
いつだって俺はお前を信じてるし、気持ちだけはいつも一緒にいるからな。
だから、変なプレッシャーや不安に負けるな!
試験後に会おうぜ!
”
手紙を読み進めるうちに魅音は落ち着きを取り戻し、その目にも生気がみなぎってくるのが詩音には見て取れた。
ほんとに現金なお人ですねぇと小さく笑みをこぼしつつ、そんな魅音を見てうれしくなってくる詩音であった。
「どうです? 少しは落ち着きましたか?」
「ありがと、詩音、ようやくエンジン掛かってきたよ」
「これは沙都子と梨花ちゃまと羽入さんから預かったお守りです。それでこれはレナさんから預かったひざ掛け。みなさんお姉のことを心配して、無事の合格を祈ってくれてるんですからヘタってる場合じゃありませんよ?」
「うん、そうだね……がんばるよ! 精一杯やる! なぁに、あのときの山狗だか山猫だかに比べりゃ高校受験なんてへでもないさね!」
二人は意気揚々と試験会場に乗り込んでいったのであった。
試験終了後の二人をエンジェルモートで待つ、部活メンバー達。
「圭一さん、少しは落ち着かれたらどうなんですの、さっきからウロウロ、ソワソワなさってばっかりですわよ」
「ほんとだよ、だよ? 圭一くんがそんなに焦ってるとこっちまで焦っちゃうよ」
「わ、悪ぃ……絶対大丈夫だって言っちまった手前、もしもがあったらと思うと気が気じゃねぇんだよ」
さきほどからお冷やを何度もお代わりし、時には立ち、時には周囲をキョロキョロと見回し、はたまたお冷やの飲みすぎか緊張のせいか、何度もトイレに行くという不審者丸出しの行動を圭一は延々と繰り返していた。
それを見咎めてたまらず注意をしてしまう、北条沙都子と竜宮レナ。
そしてそんな三人をニヤニヤしながら見つめている古手梨花と羽入の二人であった。
「今の圭一はまるでお産に立ち会ってる旦那さんのようなのです。にぱー★」
「お産に立会い……魅ぃちゃんがお産で圭一くんが旦那さん! 二人の赤ちゃん! はう~はうはうはうっ! かぁいいよ、絶対にかぁいいんだよっ?! お持ち帰りしたいんだよ、だよ~!」
「レナさん、それじゃ誘拐になってしまいますわよ、落ち着いてくださいませ!」
「指摘するのはそこか?! ちげーだろ、そもそも!」
一人、別の世界に旅立とうとするレナを落ち着かせようとして圭一はやっと普段の状態を取り戻したようであった。
「圭一はえらいのです。夕べもずっと一晩中オヤシロさまに魅音の合格祈願をしていたのですよ。でもそのせいで今日は授業中になんども居眠りしちゃって知恵のチョークを5本も食らったのです」
「な、ななななななんでそんなこと知ってんだよ、羽入!」
「あら、では羽入さんの言ってることはほんとうでらっしゃったのですね。どうりで今朝もトラップにいつも以上に派手に引っかかられて無様この上なかったんですのね」
しばし後、トイレで顔洗って頭冷やしてくるわと席を立った、圭一を尻目に残りの面々はうれしそうに、そしてちょっぴりだけ寂しそうに会話を続けた。
「はぁ、本人まったく自覚無いけどこれじゃ圭一くん争奪戦の結果見えちゃったかな、かな」
「そうですわね……もちろんわたくし達が同じような状況でも圭一さんは親身になってくださるでしょうし、心配してくださるでしょうけれど、ここまでしていただけそうにはありませんでしてよ」
「ちょっとそれだけが悔しいわね……」
「圭一は自覚してないのです。勝者は魅音なのですね」
4人の小さなため息がボックス席を一瞬埋め尽くした気がした。
「そろそろ試験も終わってお二人ともこちらに着かれてもよろしい頃合でございますわね」
「うん。でも魅ぃちゃんも詩ぃちゃんもきっと大丈夫だよ」
「二人ともよく頑張ってえらいえらいなのですよ」
「今日は僕のシューを二人に分けてあげてもいいのですよ、あうあう」
ようやく、すっきりしたのか圭一が席に戻ってきた。
「ふー、やっと俺も落ち着いてきたぜ。自分の試験の方が百万倍気が楽だぞ、これじゃ」
「あはははははは。それじゃ来年はきっと楽勝だよ、圭一くん!」
「レナさんも来年受験ですのよ? 何で他人事なんでございますか?」
「普段を見てるとレナも魅ぃほどじゃないけど、スパルタが必要だと思いますです、みぃ」
梨花の一言で一挙に落ち込むレナであった。
「は、はう……レナ大丈夫かな、かな?」
「まぁ来年は俺と二人で頑張ればいいんだよ。それに魅音ほど付きっ切りでなくてもレナなら普通に対策すれば大丈夫だしさ」
「圭一がとっても自然にひどいことを魅音とレナに言ってる気がするのです、あう……」
そうこうするうちに魅音と詩音が到着した。
「おっまたせ~、園崎魅音様と詩音の到着だよ~ん!」
「はろろ~ん、皆さんお待たせしました。 ……ってなんでお姉が様で私が呼び捨てなんですか?!」
二人を迎えて、試験はどうだったとかいろいろと会話が弾んでいく。
それは見慣れたいつもの風景。
この先、魅音の卒業式も控え、こうやってメンバー全員が揃って騒ぐ機会も少しずつ減っていくかもしれない。
しかし、この仲間達の結束は揺るぐことなく、変わることもなく続いていくだろう。
春はもうすぐそこまで来ていた。
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1: RENSEI URL 2009年04月12日(日) 午後11時15分
このサイトの多数の圭魅SSを一気に読んでいたら、4時間半ぐらい経っていました。大変面白かったです。ありがとうございました。これからも頑張って下さい。