▼ 2009/04/25(土) ひぐらしのなく頃に ~器満たし編~ 第22話(後編)
ひぐらしのなく頃に ~器満たし編~
第22話(後編)
深呼吸を数回やって両手で頬を軽く打つ。
目の前には我が家の門。
普段ならさっさとくぐり抜けられるはずのこの場所が、今は大きな壁のように感じてならない。
「お姉、さっきから何度その気合入れをすれば気が済むんですか? このままじゃ雛見沢の酸素が全部お姉に吸われてしまいますよ」
「だ、だってぇ~。婆っちゃに正面きって意見するの初めてなんだもん。緊張するなって言うのが無理だよ」
「おいおい、意見するのはお前だけじゃないだろ? 俺と梨花ちゃんも一緒だし、それにここには他の皆……部活メンバーはもちろん、分校生徒全員の気持ちまであるんだぜ。緊張するのは俺も一緒だけど、恐れることはないはずだぞ」
圭ちゃんはそう言って、レナから封筒を受け取る。
「圭一くん、魅ぃちゃん、梨花ちゃん。確かに預けたんだよ」
「はいなのです。皆の気持ち、お魎にきちんと届けてくるのです」
「ボク達は一緒できませんですが、ここで応援しているのですよ」
「圭一さん、魅音さん、梨花……わたくしのために……」
沙都子が涙ぐんだ声をもらすと、圭ちゃんは笑ってその頭をちょっと乱暴に撫でる。
「沙都子、そんなに心配すんなって。じゃあ、魅音、梨花ちゃん、行こう……あれ? あの車……」
圭ちゃんが指差した方向を皆が見ると、そこには私と詩音が見慣れた車がこっちに向かって走ってくる姿があった。
「詩音、あの車……」
「ウチの車ですよね? んー……運転席の葛西は当然として、あっ! お父さんとお母さんが乗ってますよ」
「お母さんはともかく、なんでお父さんまで……?」
首を傾げる私達をよそに車は園崎家の前で止まり、お父さんとお母さんが降りてくる。
ともあれ、各々が挨拶をすると二人は楽しそうに笑って挨拶を返してきた。
「おやおや、なんだい? いつものメンツ勢揃いとはいえ、何だか物々しい空気だねぇ? ああ、何かい? 魅音と圭一君のあの話、やっと鬼婆様に報告するってぇのかい?」
「あうう!?」
「こ、こら魅音! この大事な時に電源落ちそうになってんじゃねぇっ!」
お母さんの言葉に意識が飛びそうになるのを圭ちゃんが肩を揺さぶって止めてくれる。
うう、我ながら情けない……
「え、えーと……まあ、その話もあるんですが……なぁ、皆。茜さん達にも聞いてもらったほうがいいんじゃねーかな……」
圭ちゃんが皆をぐるっと見回し、最後に私をじっと見る。
「うん……遅かれ早かれ、お母さん達にも届く話だしね。私は異論ないよ」
「圭一と魅ぃがそう言うのなら、僕もOKなのです」
「レナもOKだよ。沙都子ちゃんはどうかな?」
「わたくしは圭一さんと魅音さんに全てお任せしますわ」
「ボクも話していいと思いますです」
「私の意見は言うまでもないですよね。お姉、圭ちゃん、お願いします」
皆の言葉を受け、圭ちゃんと私はこれから自分達がやろうとしていることを両親に詳しく説明していく。
「そうかい……アンタ達の答えをねぇ……確かに、言われてみればあの一件はどうにも都合が良すぎるねぇ」
「しかし、それはあくまで君達の推測にすぎない。その推測と村の子供達の気持ちだけでは難しいぞ」
「うん……きっと正解は婆っちゃしか知らないだろうし。でも、今誰かがやらないと、この問題は永遠に解決しないと思うんだ。婆っちゃがお墓の下まで全部持っていってもさ、号令は残ったまんまになっちゃうから……」
私はきゅっと唇をかみ締める。
「俺達は俺達ができることを精一杯やります。それでダメならまた違う方法を考えてやってみます。北条家の汚名をそそいで、沙都子が名実共に村に戻れるまで」
ぞくり、と背筋が伸ばされるような圭ちゃんの決意の声。
それは他の皆も同じだったようで、驚いたことにお父さんとお母さんも目を見開いて圭ちゃんを見つめている。
「まあ、頑張ってみな。ところで、鬼婆様と果し合いするのはここにいる全員かい?」
「ううん。私と圭ちゃん。あとは梨花ちゃんだよ。婆っちゃがそこまで構えない人間って言ったら、私と梨花ちゃんだし、圭ちゃんは……え、えっと、こ、こここ、婚約報告も兼ねてるし、頼りになるしぃ……」
「はっはっはっは。茜、次の頭首夫妻は亭主関白になるかもしれないぞ」
「みたいだねぇ……ゲームみたいな勝負事じゃあコテンパンにしてるとは聞いちゃいるけど、物事の根っこは圭一君ががっちり握ってるみたいだね。まあ、それはいいとして。あたしは3人で行くのは反対だね」
ぴしゃりと言われ、私は何で反対なのかと首を傾げる。
「行くのなら、あんたの頼れる仲間全員でお行き。その方が覚悟も示せるってもんさ……そう、沙都子ちゃんも鬼婆様のまん前にいてもらうのさ。ただじゃあすまないかもしれないね。けど、そこまでしてでも、鬼婆様と喧嘩になってでも沙都子ちゃんを村に戻したい……それくらいの覚悟、あんたらは持ってないのかい?」
「そんなことない!」
「なら決まりだね。あたしとウチの人、葛西も見物させてもらうよ。どっちにも味方しないし、口出しもしないよ。いいね」
お母さんの言葉に私達はこくりと頷く。
「ですが、本当によろしいんですの? わたくしが園崎家の敷居をまたいでも……」
「まあ、どやされるのは覚悟しておいたほうがいいだろう。だが、これは園崎家と北条家の間のことだ。その決着の場に北条家の人間がいないというのはスジが通らないのではないのかな。まずはスジを通す。面倒なようだが、差し障りなく物事を行うにはそれが一番いい」
「それを忘れ、怠ると後で手痛いしっぺ返し喰らったり、返すのがきつすぎるツケがついちまうのさ。よぅく覚えておきな」
どこか自嘲気味な声音で私達に伝えてくるお父さんとお母さん。
しっぺ返しとかツケとかはよく分からないけど、確かに園崎・北条両家の問題を話し合う場に北条家の人間……沙都子がいないとなると、婆っちゃに門前払いを言い渡されてもおかしくはない。
「うん……お父さん、お母さん、アドバイスありがとう」
「ちょっとしたお節介さ。さぁ、モタモタしてると日が暮れちまうよ。やるならやるでとっとと行きな」
とっとと行きな、と言っておいて両親とそこに合流した葛西さんは家の中にスタスタと入っていってしまう。
「ちょ、茜さんも親父さんも葛西さんも待ってくださいよ! ほら、俺達も行くぞ」
「う、うん!」
何か圭ちゃんの言葉にひっかかるものを感じたけど、今はそれを気にしてる時じゃない。
「ふぁいおー、なのです」
梨花ちゃんが元気よく右手を上げ、私達も「おー」と倣って門をくぐる。
「……えい」
敷居を跨ぐときに沙都子が何かを吹っ切るような声を出す。
「沙都子、大丈夫だよ……婆っちゃだって、今のまんまじゃいけないって思ってるはずだからさ」
「はい……」
そこからは無言で全員が離れへの廊下を歩いていく。
先行しているお母さん達の姿はもう見えない。
私は離れの手前にある部屋に皆を通し、少し息をつく。
「皆、まずはここで待機してて。私が一度婆っちゃに……」
「その必要はないよ。鬼婆様はあんたらの話を聞いてくださるそうだ……でも、手短に頼むよ。今日は少しばかり節々が痛むそうだからね……ああ、だからと言って話を後日にってのはなしだよ。鬼婆様が話を聞く気になってる今を逃したら、次はいつになるか分からないからね」
「うん、分かった」
「ああ、それと。ちょうどよく公由の爺様がお茶飲みに来てたからね。爺様にも話を聞いてもらいな」
偶然だろうけど、何か状況が整いすぎていることに私は少し不安になるが、逆に言えば公由のお爺ちゃんも同時に説得できるかもしれないということだ。
これは、千載一遇のチャンスかもしれない……以前の私なら、こんなチャンスにすら手を伸ばさなかっただろう。
でも今は違う。
「じゃあ、皆……行くぜ」
圭ちゃんが立ち上がって宣言すると、私も他の皆もしっかりと頷いて立ち上がる。
お母さんの先導で、一塊となって離れへと歩く。
「鬼婆様。全員、抜けなく連れてきたよ」
「入りな」
「さぁ、ここから先はあんたら次第だ。頑張りな、とだけ言っておくよ」
「はい……婆っちゃ、入るよ」
言って障子を開けると、その正面にいつもより険しい表情の婆っちゃと、普段の温厚な表情とは打って変わって厳しい顔をした公由のお爺ちゃんがいた。
その脇にお父さんと葛西さん……そしてお母さんが、するりと中に入ってその列に加わる。
「ふん、北条の小娘も一緒たぁ……魅音、こん娘をわしのまん前に連れてくるんが、どぎゃあなことかわかっちょるんね?」
「十分分かってるよ。さ、沙都子……入って」
「は、はい……」
婆っちゃの雰囲気に気圧されたのだろう、沙都子はおそるおそるといった感じで離れの敷居を跨ぐ。
沙都子だけじゃない、レナも詩音も梨花ちゃんも羽入も……そして私も婆っちゃに飲まれかかっていた。
ただ一人、圭ちゃんだけがいつもと変わらぬ調子でずかずかと離れに入り、どっかりと……と言うとおかしいけど、まさにそんな感じで正座をする。
「こんにちわ、お魎さん。茜さんから手短にって言われてるからさっさといかせてもらうぜ。話ってのは他でもねぇ。ここにいる沙都子……いや、北条家に対する村八分の号令、そろそろ取り下げてもらいてぇんだ。もう5年もたったし、婆さんに罵詈雑言吐いた当事者はこの世にいない……はっきり言って、沙都子を村から疎外するっていうの、もう意味がないんじゃねぇかな」
そしていつもと変わらぬ口調で婆っちゃに話しかける……隣で聞いてる私はもう冷や汗ものだ。
両親と葛西さんは表情を全く変えないし、お爺ちゃんはピクリと右の眉を顰めさせる。
「ちょ、圭ちゃん。そんな単刀直入すぎるよ。えっとね、婆っちゃ。ここにいる皆と分校の皆で話し合って決めたんだ。沙都子を村に戻すよう、婆っちゃにかけあうって。圭ちゃんも言ったけど、北条家への懲罰……もう意味がないと私も思う。あれからもう5年もたって、沙都子のご両親もいなくなって、村の皆だって『もういいんじゃないかな』って思ってるみたいだから……でも、婆っちゃの、園崎家頭首の号令がないとこの村は動かないんだよ……」
「お婆様、私からも頼みます。お婆様は私が沙都子の世話をしにこの村に戻ってきていることを黙って認めてくれていました。そのことはとても有難く思っています……だから、その優しさを、沙都子にも向けてあげてください!」
詩音が土下座をして婆っちゃに頼み込む。
こんな詩音を見るのはあの時以来だ……いや、あの時よりも更に強い気持ちで詩音は婆っちゃに対峙している。
「僕からもお願いしますのです。沙都子は大切な友達……仲間なのです。村から仲間はずれにされている沙都子と僕が一緒に暮らすことに、お魎は何も言いませんでした。僕はずっと、お魎は沙都子のことを大嫌いだと思っていましたのです……でも、それを思い出して、本当は違うと思いますのです」
梨花ちゃんも沙都子の親友として頭を下げる。
そう、村八分にされている家の娘と御三家の一つである古手家の幼き頭首が同居するということに、婆っちゃは何一つ口を出さなかった。
「婆っちゃ。婆っちゃだって本当は……ううん、最初から北条家を疎外する気なんてなかったんでしょ?」
「なぁん……あん家の主は雛見沢に弓引いた罰当たりじゃ。そがぁな家のモンを……」
「罰するのが園崎の務め……そう言いてぇのか? ああん!?」
婆っちゃが言い終わる前に鳴り響いたのは畳が破れるんじゃないかと思うくらいの衝撃音と、離れが壊れるんじゃないかと思うくらいの怒声。
突然のことに、その場にいる全員がぽかん、とした表情になってしまう。
怒声の主は片膝を立てて身を乗り出して……ああ、これじゃあ遠山の金さんだよ、圭ちゃん。
でも、杉良みたいでちょっとカッコイイかも……何だか後光まで見えちゃうよ。
「いいか、婆ぁ。アンタがどんな経緯で北条家を村八分にする号令かけたのかの真相は、そりゃあアンタしか知らねぇこった。けどな、色々話を聞いたりしてたらな。当の北条家はよ、アンタのことを微塵たりとも恨んでねぇってことが分かったんだよ。普通だったらありえない話だぜ? しかもだ。アンタに罵詈雑言吐いた当人が言ってたそうだけどな、いずれアンタが何がしかの便宜を図ってくれるって話だったそうじゃねぇか。ここまでくれば、あの一件が婆さんと北条の親父さんの間で仕組まれた出来レースだってのは簡単に推測できるぜ。あの時、アンタは村の賛成派と反対派、そして日和見派……ついでに言うなら園崎内の意見もまとめきれてなかったそうだな。もっとも、建設大臣の孫を反対派が誘拐した時に隠し場所を提供したって話だから、最終的にはダム反対派に回ることになってたんだろうが……園崎をまとめきるころには村が取り返しのつかないくらいに滅茶苦茶になると危惧してたんじゃねぇのか?」
そこまでまくしたてた圭ちゃんはぎろりと婆っちゃを睨む。
「そこに救世主が現れたんだね……沙都子ちゃんのお父さんが」
「おそらく、沙都子のお父様もこのままでは村が滅茶苦茶になると気付いたのでしょう。そこで秘密裏にお婆様と話し合いを持ち、一芝居打った……違いますか?」
レナと詩音が畳み掛けるように言い、圭ちゃんと同じように婆っちゃを見つめる。
「お魎、どうか本当のことを話してくださいなのです。このまま隠し通していても雛見沢のためにはならないと思うのです……」
「ボクは村に来てまだ少ししかたっていません。ですが、村の皆はボクをすんなりと受け入れてくれました。そんな優しい雛見沢が沙都子だけを仲間はずれにしているのは、きっと村にとって不幸なことだと思うのです」
梨花ちゃんと羽入もまた真摯な目で婆っちゃと向き合う。
「……ですが」
今まで黙っていた沙都子が顔を上げる。
「ですが、お父様がお魎さんに暴言をしたのは事実ですわ。そのことはわたくしが代わって……」
「謝る必要はねーぞ。少なくとも、真相がハッキリしねぇ内はな」
婆っちゃに頭を下げようとした沙都子を制し、圭ちゃんがそれまでよりも更に厳しい目で婆っちゃを見る。
「見たかよ。出来レースだったとはいえ沙都子は5年もの間、ずっと疎外され続けてきて、それでもアンタのことを何一つ恨んじゃいねぇんだ! こんな奴を犠牲にして体面保ってるなんて恥ずかしくねぇのか!」
言い終わると同時に右の拳が畳を打つ。
「かぁーっ! じゃかしいわ、こんクソ坊主が! なんね、おとなしゅう聞いとりゃあ図に乗りおってからに! 身内でもにゃあガキ一人ぃ……」
「沙都子は俺の仲間だ! 仲間ってぇのは身内も同然だろうが! それによ、俺の身内ってことは婆ぁの身内でもあんだよ!」
「なぁん?」
「俺と魅音は結婚の約束してんだ! 俺はもう園崎の身内だ! その俺が沙都子は身内って言ってんだ! なら、婆ぁにとっても沙都子は身内だろうが! 園崎家の頭首は身内一人に対しても仁義を立てられねぇのか!」
け、けけけ、圭ちゃん!? そんなノリで婚約報告したら……
「ああん? ワシぁ、おみゃあと魅音の仲ぁ、認めた覚えはないんね!」
「アンタが認めようが認めまいが、俺は魅音の旦那になってやるわ! どうせアンタはしばらくすりゃあ土の下だ。そうすりゃ反対もクソもねぇ! けどな、沙都子のことに関しちゃ、アンタが生きてる内に決着つけねぇといけねんじゃねぇのかよ!」
圭ちゃんと婆っちゃの怒声が交錯し……口をつぐんだのは婆っちゃの方だった。
「アンタが墓の下に入って、頭首になった魅音が号令かければそりゃあ解決はするかもしれねぇな。だがな、それはアンタの責任を魅音に押し付けるだけじゃねぇのかよ。さあ、墓にションベンひっかけられたくなかったら、洗いざらい話して沙都子に頭下げやがれ!」
そう言い切った圭ちゃんは今にも婆っちゃに詰め寄りそうな姿勢のまま婆っちゃを睨みつける。
「婆っちゃ……私、婆っちゃが大悪人って思われたまま語り継がれるなんてそんなの嫌だよ……」
私の口から漏れたのは絞り出すようなうめき声。
でも、婆っちゃが大好きな孫娘としての嘘偽りない本心。
「お魎さん。お魎さんが大事に厳しく育てた魅ぃちゃんと、その魅ぃちゃんが選んだ圭一くんを信じて、あの時のことを……真相を話してくれませんか?」
レナがそっと声を投げかけると、お母さんが薄く笑う。
「母さん、こりゃあ母さんの負けさね。だから言わんこっちゃない。母さん、いつだったか、うちの人とアタシが言ったろ? 泥被る決心は良いけど引き際間違ったら終わりだよってさ」
穏やかなお母さんの声にも婆っちゃは押し黙ったままだ。
「お魎さん、ワシにもそろそろ話してくれんかな……あの時さ、お魎さんと北条の親父との間で何を話したのかをさ」
諭すようなお爺ちゃんの言葉に、婆っちゃは一つ息を吐く。
「ふん、みぃんな圭一達が話してくれたわ。後のことは好きにしな。ワシはもう休む」
吐き捨てるように婆っちゃは言い、離れの奥へと体を向ける。
「ちょ、待てよ! 逃げんのか!」
「圭一君。今日はここまでにしときな。こっちとしても、今の段階で頭首様に寝込まれちゃあ色々と不都合っていうもんさ。ともかく、この場は引いておくれでないかい」
「圭ちゃん。お母さんの言う通りだよ。今、婆っちゃが倒れちゃ、元も子もないよ」
お母さんの言葉に続いて、私もいきり立つ圭ちゃんを宥める。
「……そうだな……婆さん、後は婆さん次第だぜ」
厳しい顔つきのまま、圭ちゃんは婆っちゃに背を向けて離れを出て行き、私達は婆っちゃに一礼してからその後に続く。
そして母屋の一室で一休みしていた時だった。
「ちょいとお邪魔するよ」
「お母さん」
「さて皆、まずはお見事……と言っておくよ。これで実質的に沙都子ちゃんへの村八分はなくなったも同然さね」
にこやかに言うお母さんに圭ちゃんは首を傾げる。
「そうですか? でも、お魎さんは何も……」
「聞いてなかったのかい? あの時、婆様はこう言ったはずだよ。『みんな圭一達が話してくれた。後のことは好きにしろ』ってね。つまり、あんたらの出した答えは大正解。後のことは全て任せるってことさ。婆様にも立場がある。守らなきゃならない体面ってのもある。本当なら、すぐに沙都子ちゃんに頭を下げて詫び入れたい気持ちだったと思うけどさ、そう簡単に頭を下げちゃならない理由ってのがあるのさ」
お母さんはそう言って苦笑いにも似た微笑を浮かべる。
「魅音、圭一君。今、公由の爺様が町会の主だった連中を集めて回ってる。そこで北条家への村八分の号令を取り消しな。婆様の了解は取り付けてんだ。さしたる苦はないはずさ……園崎家次期頭首夫妻の初仕事にしちゃ、ちょっと歯ごたえないかもしれないけどねぇ? ま、しっかりやっとくれ」
「ふぇえ!? ふ、夫婦の初仕事って……」
お母さんのからかいに私の頭がショート寸前になる。
「ちょ、茜さん……」
「あらぁ? あれだけの啖呵切っておいて、今更お母さんを『茜さん』ってのは、ちょっと他人行儀すぎませんか?」
「そうなんだよ? 圭一くんは園崎家のお婿さんなんだから、茜さんのことはもっと別の呼び方があると思うな、思うな」
「べ、別の呼び方って……」
「みー、言わなきゃ分からないのですか?」
「あう、分からないならボク達が教えてあげますのです」
「はあ……頼りがいがあるのかないのか本当に分かりませんわね……」
口々に圭ちゃんを追い詰める仲間達。
ちょ、ちょっと待って……えーと、お婿さんである圭ちゃんが『茜さん』以外にお母さんを呼ぶとすると……
「~~~~~~~~!?」
その答えに気付いた瞬間、私は自分でもどう言っていいのか分からない声を上げ、目の前が真っ白になっていくのをただ受け入れざるを得なかったのだった。
そして、私が仲間達の手によって再起動した時はもう日も暮れた夕飯時。
「ううう、毎度毎度我ながら情けない……」
「いや、俺もお前が先にぶっ倒れなかったらオーバーヒートしてたかもしれん……」
肩を落としてとぼとぼと歩く私と圭ちゃんが恨めしそうに後ろを振り返れば、ニヤニヤと意地の悪い微笑を浮かべた顔が6つ。
「……こりゃ、当分の間は皆に弄くられそうだね……」
「覚悟だけはしとくか……」
ひそひそと零し合い、はぁっとため息をつく。
「ああ、そうそう。皆、ちょいと質問なんだけどねぇ」
「何、お母さん」
「この中で甘いものがダメな子はいるかい?」
唐突な問いに私達6人は首を横に振る。
「そりゃ良かった。いやね、鬼婆様がさ。今度皆で来る時は前もって教えておいてくれってさ。何でも、おはぎをたんまりと作って出迎えてやるって、えらく気合入ってたねぇ」
「皆で……ってことは、沙都子も?」
「当然さね。いつでも遊びに来いって感じだったよ。それと魅音になんだけど……圭一君との付き合いは全面了承。デートしようが何しようが勝手だけど、毛饅頭だけはまだ食わせるなってさ」
そう言って、お母さんはさも楽しそうに笑い出す。
「け……まんじゅう?」
「何だ、それ? 誰か知ってるか?」
圭ちゃんが仲間に水を向けるが、誰も首を傾げるばかりで……いや、羽入だけが何故か顔を真っ赤にしている。
「ボ、ボクは何も知らないのです! 何も聞かないでくださいなのです!」
涙声でこう言われては深く聞くこともできず、その毛饅頭とやらの正体は掴めないまま私達は集会所へと到着する。
「あれ? 父さんと母さんじゃねーか。どうしたんだよ」
「どうしたもこうしたもないだろう。大体のことは葛西さんから聞いたが、大活躍したそうじゃないか」
「それに、魅音ちゃんとのことも聞かされたわ。不純異性交遊じゃないんだから、隠さずに堂々と報告して欲しかったわ。魅音ちゃん、この子は随分と危なっかしいけど宜しくお願いね。茜さん、圭一のような子には本当にもったいない話で……」
「あたしはお似合いの組み合わせだと思うよ。魅音がどう頑張っても足らないところを圭一君が支えて、もちろんその逆も然りって感じかねぇ。まあ、二人ともまだまだ幼いところはごまんとあるし、その辺りはあたしらがおいおい……だね。ご覧の通りの娘だけど、こちらこそ宜しく頼むさね」
こうやって親同士が挨拶を交わすのを見ると、改めて圭ちゃんとの関係を実感してしまう。
にひひ、花の独身生活なんてものとは無縁だね、圭ちゃん。
「さて、町会の老人方を待たせるのもいけないからね。圭一君、魅音。ここからはアンタらに任せるよ」
「はい」
にやけかけた顔と気持ちを引き締めなおした私は圭ちゃんと一緒に頷き、集会所の戸を開ける。
広間には既に町会の主だった人が集まっているようで、それなりのざわめき声が聞こえてくる。
土間で靴を脱いで一つ深呼吸。
「沙都子、居づらいかもしれないけど胸を張ってシャキッとしててね。アンタの前には私と圭ちゃん。横にはレナと詩音と梨花ちゃんと羽入。そして後ろには婆っちゃがついてるからさ」
「はい……ああ、緊張いたしますわ……」
「あはは、大丈夫だよ。お魎さんを怖がってる町会の人たちが、お魎さんをタジタジにさせた圭一くんに勝てると思う?」
「ですよね~。町会連中は腑抜けばっかりですから、圭ちゃんが口を開けば吹っ飛んじゃいますよ」
「あのな……俺はゴジラじゃねーぞ……さあ、行こうぜ」
「はいなのです。今の僕達に敵はいないのです」
「雛見沢は分校部活メンバーで征服するのですよ。あう!」
小さな声で「ふぁいおー」と気合を入れて、私達は広間へと足を踏み入れる。
ざわめきが一瞬静まり、視線が私と圭ちゃんに集まった後、私達の後ろにいる沙都子に突き刺さる。
敵意……というよりはどことなく戸惑いも混じったような……そう、触れ合いを避けようとするような目。
沙都子は居心地悪そうにしていたが、それでも私が言ったように胸を張ってその視線を受け止める。
「前原圭一さん。どうぞ上座……私の隣に座ってください。古手家頭首はいつもの場所へ。残りの方は下座の方へ」
「分かった。皆、沙都子を頼むぜ」
圭ちゃんを上座へ誘ったことにどよめきが起き、それは私と圭ちゃんが座ってもしばらく続いていた。
「それでは、急の集まりですので早速案件を提示させていただきます。そちらにいる北条沙都子……いえ、北条家に対する処遇を取り消してはいかがかと。園崎家頭首お魎がこの処遇の号令をかけて既に5年。北条家はもう十二分に責めを受け、贖ったと私は思います。また、ここにいる前原圭一、竜宮レナ、園崎詩音、古手梨花、古手羽入はもちろんのこと、将来この村を背負い、動かしていく子供達も私と同意見であります。町会の皆様方においても、この場でご理解を頂きたく思います」
毅然とした声音を作って私は一気に言い切る。
言葉としては柔らかくしたつもりだが、その内容は北条家への村八分号令を解くから従えと言わんばかりのもの。
当然ながら、ややあってあちこちから前向きでない呟きが聞こえてくる。
すいっと視線を投げて「言いたい事があるならはっきり言って」と催促してみるが、私の視線を受けた人は悉く目をそらせるばかりで、広間の空気が淀んでくるのがはっきりと分かる。
このままでは埒が明かない。
何かこの空気を晴らす手立てはないだろうか……私がそう思案しようとした矢先だった。
あの時と同じように、畳を踏み抜かんばかりの勢いで圭ちゃんが片足を踏み出す。
「やいやいやい。いいトシしたジジイ共がウジウジウジウジしてんじゃねぇっ! アンタらは自分の意見すら声に出して言えねぇのかよ! ここは何する場所だ? 皆で話し合って相談する場所だろうが! 魅音の提案に是か否か! 否ならその理由は何だ!? それくらいとっとと言いやがれ!」
獅子が吼えるとはまさにこのことだ。
圭ちゃんの迫力に圧倒されたのか、町会の皆は完全に静まり返ってしまう。
「何にもねぇのかよ? ならこの案件の結論は決まったな。北条家への村八分は本日ただいまをもって完全撤廃だ。それでいいな!」
「ちょお待ちぃ。相談するも何も、お魎さんの了解を取り付けんことには……」
「そうねそうね。そぉに、何で前原の坊主が魅音ちゃんと一緒に上座に座っとるんや。いつからそんな立場になっとね?」
予想はしていた反応。
だが、それに対する明確な答えを私達は持っている。
「頭首お魎からは『この件に関しては全て任せる』との了解を得ています。また、前原圭一さんが上座に座るのは……頭首お魎の了解を取り付けた当人だからです」
「なっ……そぉは本当かね?」
「まさか……こん坊主が……」
「うんうん、確かにそれは事実だよ。いやあ、あの時の圭一君は凄かったねぇ。あのお魎さんが何も言えずに首を縦に振った……いや、振らされてしまったんだからねぇ」
どよめきを制するかのように通るお爺ちゃんの声。
「デカイ声が聞こえたんでお邪魔するよ……なんだい、圭一君の剣幕に叩きのめされちまってんのかい?」
「そうなんだよ。さすがはお魎さんの首を縦に振らせた男だよねぇ」
「まあ、確かにあの時の圭一君はとんでもない迫力だったねぇ。何しろ、あたしもウチの人、葛西も身動きできなかったからねぇ」
広間に顔を出してきたお母さんが溜息交じりにお爺ちゃんとそんなやりとりをすると、下座に座っていた仲間達が何かを察したかのように目を輝かせる。
「本当だよ。お魎さんに詰め寄った時の圭一くんは凄い迫力だったんだよ。レナ、ちょっと怖かったんだよ」
「ですよね~。私もあの時は心底震えがきましたよ。お婆様が圭ちゃんに絞め殺されるんじゃないかって……鬼の園崎お魎が手も足も出ないなんて、今でも信じられませんよ」
「みー、圭一は鬼よりも怖い鬼神様なのですよ。がおー」
口々に婆っちゃを説き伏せた時の圭ちゃんの様子を話す仲間達……こう、やけに大きな尾ひれがついているような気もするが、あの場に居た全員が圭ちゃんに圧倒されていたのは紛れもない事実。
羽入はぶんぶんと首を縦に振り、沙都子は感極まった顔で私と圭ちゃんを見ている。
「鬼神様……うん、ワシもそう思うよ。まるで、宗平さんがお魎さんやワシらを叱り飛ばしてる時みたいじゃったよ……いやいや、こんな男が園崎家次期頭首の婿とは! これで園崎も雛見沢も安泰というものだよ!」
え? お、お爺ちゃん?
こう、背中に冷や水を垂らされたようないやーな寒気が私を襲う。
おそるおそる隣を見ると、圭ちゃんも顔をひきつらせて固まってしまっていた。
「な、なな、ななな……」
町会の人たちがぱくぱくと口を動かし、そして……
「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
爆発した。
「それは本当かね!? 魅音ちゃんと前原の坊主が!?」
「いや、しかしさっきの迫力はまさに宗平さんみたいじゃった! 鬼の園崎に鬼神様が戻ってきたんじゃ! 前原君なら魅音ちゃんの婿にぴったりじゃ!」
「お魎さんも了承済みなんね? いやはや、ほんにめでたいことじゃ!」
蜂の巣をつついたような大騒ぎ。
「ありゃ、お魎さんに『まだ言うな』って口止めされてたけど、思わず言っちゃったよ。圭一君、魅音ちゃん。すまんねぇ」
にこにこと笑いながら謝っても何か説得力に欠けるんだけど、お爺ちゃん。
「あん時は村長の勘違いじゃったが、今度は本当の本当なんね? いやあ、これであん時の話が無駄にならんで済むっちゅうもんや」
「あ、あの時って……」
「ほれ、前原君。古手神社でのアレじゃよ。まだ当分先のことじゃと思うが、仲人や名付け親のこと、良かったら考えておってくれんかね?」
「ちょ、待ってよー。そんなまだ気が早すぎるよ。私も圭ちゃんもまだ15歳の子供だよ?」
「なぁに、後3年もすれば結婚できるじゃないか」
「そうねそうね。お魎さんを早く安心させてあげるっちゅうのも大切なことだよ?」
もう止めようがない。
ふと下座を見れば、仲間は皆ニヤニヤと楽しそうに笑っているし、お母さんに至っては……
「まあ、結婚するのは決まってんだし、さっさとやるのがいいかねぇ?」
などと、私達に聞こえるように独り言を言ってたりする。
「あ、あー……皆さん。どうか今この場はこの辺で勘弁してください。いや、本当にお願いします」
さっきまでの大迫力はどこへやら。
ものすごく情けない顔と声でべったりと土下座する圭ちゃん……ちょっと格好つかないってもんだよ、それは。
とはいえ、私もこのままだと恥ずかしくて電源が落ちてしまうのは確実だ。
「わ、私からもお願い。このことはまた日を改めて……」
周りに何とか聞こえると思うような声で私は言い、圭ちゃんと同じように頭を下げる。
何と言うか、園崎家次期頭首とその伴侶っていう威厳も何もあったもんじゃないよ。
「……はっはっはっはっは! まあ、皆の衆。二人をからかうのもこれくらいにして、ワシらがまずやらないといけないことがあるんじゃないかい? 沙都子ちゃん、上座に来ておくれ。そうそう、前原君と魅音ちゃんの隣でいいよ」
公由のお爺ちゃんに言われ、沙都子は不思議そうな顔で私達の隣に座る。
「沙都子ちゃん。5年もの間、すまなかったねぇ……」
「そ、そんな……わたくしはどうとも思っておりませんから、どうぞお顔を上げてくださいまし」
深々と頭を下げたお爺ちゃんに、慌てて沙都子が声をかける。
「赦してくれるのかね?」
「当然でございますわ。わたくしは村の皆さんを何一つ恨んでなんかおりませんのよ」
「聞いたかね、皆。ワシらはこんな優しい子を5年も邪険にしておったんじゃ……心から謝らんといけないよ」
「村長さん……」
「全ての経緯は、いずれお魎さんが自分の口で話してくれるじゃろ。けど、これだけは、今この場でやっておこうよ」
お爺ちゃんはそう言って自分の席へ戻る。
やがて、一人、また一人と町会の皆が沙都子の前に進み出て頭を下げる。
「ワシで最後かな……沙都子ちゃん。今まで本当にすまなかったね。これからは困ったことがあったら何でも言っておくれ。ワシらも村の皆も力になってくれるよ」
「はい……皆さん、これからも宜しくお願いしたしますわ」
沙都子が静かに頭を下げ、その場にいる全員がしっかりと頷く。
「これで、ようやく村が一つに戻ったね……圭ちゃんのおかげだよ」
「いや、これは沙都子を大事に思う皆の力があったからこそだぜ。俺の力なんて、そうたいしたもんじゃねーよ」
ニカッと笑う圭ちゃんは、本気で自分はたいしたことはしていないと思っているようだ。
でも、圭ちゃんが一番頑張ってたし、そもそも圭ちゃんが声を上げて私達をまとめ上げてくれなかったらきっと……
「どした? 俺の顔に何かついてるか?」
「魅音さんは圭一さんに見とれていたのでございますわ。全く、婚約者ならそれくらい分かってあげてくださいまし」
「ちょ、沙都子ー!?」
「きゃー、詩音さん助けて下さいましー!?」
いきなり始まった私と沙都子の追いかけっこに、集会所は暖かな笑いで包まれたのだった。
第2部:エピローグ
私達が集会所を出たのはもう夜の10時を過ぎようとしていた頃だったろうか。
仕事の関係で一足先に帰った圭一の両親を除いた私達9人は夜道を軽い足取りで歩いていた。
あの後……そう、町会の面々が沙都子に頭を下げ、それを沙都子が赦して雛見沢が本当の意味で一つに戻れた後。
集会所は大宴会の場と化した。
外で待機していた圭一の両親と魅ぃの父親、葛西も混ざり、飲めや歌えやの大騒ぎ。
残念ながらワインはないので私は葡萄ジュースで我慢していたけど……酔っ払った老人連中は思い出したかのように沙都子の前に来ては何度も何度も謝っていた。
沙都子も付き合いがいいもので、その度に「もうよろしいですのよ」とちょっと引きつった顔で受け答えしていたものだ。
それを何となく見ていた時、私ははっとなる。
酒臭い息というのは、沙都子にとってはトラウマの一つのはず……そう、吹きかけられただけでも鉄平の暴力や、父親の姿を思い出すであろうから。
けれど、その時の沙都子はただ単にアルコール臭に囲まれているのが辛いだけで、過去を思い出しているような感じではない。
そう、沙都子は過去のトラウマを乗り越えることができたのだ。
沙都子だけではない。
魅ぃもレナも詩ぃも自分が囚われていた呪縛を乗り越える事ができた。
自分ひとりで乗り越えたのではない。
そこにはいつも仲間がいた。
お互いがお互いのため、自分に出来ることを精一杯やりぬいたからこそ、私達はこうやって笑い合うことができているのだ。
この暖かな景色がいつまでも続いて欲しい……けれど、そのためには後一つ、打ち破らねばならない呪縛がある。
それは、私だけが知っている「未来の真実」。
何らかの形でその真実に皆を気付かせ、立ち向かわなければいけない。
でも、一体どうしたら……
「梨花、話したいことがあるのなら、素直に話したほうがいいのですよ?」
迷いが顔に出てしまったのだろうか、羽入が柔らかな声で話しかけてくる。
その声音はどこか私の全てを見通しているかのような響きにも似て。
一体、彼女は何者なのだろうか……いつもなら、他の仲間なら作り笑いで誤魔化せるはずなのに、何故か私は素直に頷いてしまう。
私に今出来る精一杯のこと……それは、「未来の真実」を素直に話すこと。
「みー。皆、お話があるのですが、いいですか?」
意を決して私は口を開く。
「ん? 何だ。梨花ちゃん」
「皆に聞いてもらいたいことがあるのです。ただ、少し長くなりますので……圭一、また秘密基地を借りてもいいのですか?」
「まあ、いいけど……皆は大丈夫か?」
「知恵先生のチョークが怖いけど、大事な話ならすぐに聞かないとね。私はOKだよ」
圭一の問いに魅音が答え、他の仲間も躊躇いなく頷く。
「……葛西と茜にも聞いて欲しいのです。これは、大人の力も必要になってくることなのです……」
「ふぅん……頼りにされてるって思っていいのかい、梨花ちゃま」
「はいなのです」
「なら、あたしも圭一君の秘密基地とやらにお邪魔してみようかねぇ。このまま直に行くんじゃないんだろ? 一度家に帰って、こっそり……ってところかい?」
「そうですね。なら、俺は裏口で待ってるから、皆はそっちに回ってくれ。」
「りょーかい。じゃあ、皆、一旦解散だね」
圭一と魅音の号令で散っていく仲間達。
私は魅音と並んで歩きながら頭の中を整理していく。
伝えないといけない、信じてもらわないといけない。
この、陽だまりのような暖かい雛見沢が今度こそ消えてなくならないように。
ひぐらしのなく頃に ~器満たし編~ 第2部・了
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1: SETH URL 2009年04月26日(日) 午後7時51分
初コメです。失礼します。
更新のたびに読ませていただいてます。
続きが楽しみです。
この沙都子関係の話はやはり目にゴミが入りますね、グスン。
これからもがんばってください
2: RENSEI URL 2009年04月26日(日) 深夜1時00分
第三部?も楽しみにしてま~す(・ω・)/